奈良の小さな会社が表参道ヒルズに店を出すまでの道のり/中川淳

 

 

 先日、中川政七商店の中川淳さんが学生たちのセレクトショップ出店のサポートをされた際の取り組みを紹介した『中川政七商店が18人の学生と挑んだ「志」ある商売のはじめかた』を取り上げましたが、コチラは中川さん自身が自社で取り組まれたリブランディングの過程を紹介されたモノです。

 

 この本が出版されたのは2008年で、自社でのリブランディングで一定の成果を収めて、工芸を取り扱う企業のコンサルティングを手掛け始めた当初だったということで、『中川政七商店が18人の学生と挑んだ「志」ある商売のはじめかた』で語られている内容程、ブランディングについての方法論の体系化が進んでいるワケではありませんが、タイトルから受けるサクセスストーリーの紹介の印象とは異なり、中小企業のブランディングのススメ方といった方がいい内容となっています。

 

 中川さん自身、元々実家の中川政七商店に入る気はなかったようで大手IT企業の営業をされていたようなのですが、転職を志した際に中川政七商店に入る決断をされたようです。

 

 その中で、生活雑貨の販売を手掛ける事業を受け持つのですが、前職の経験を踏まえてかなり大胆な経営改革を行ったようで、経営におけるあらゆる側面に自社のブランドを浸透させる取り組みをされたようです。

 

 中川さんによるとあらゆる商品は「売れる」ポテンシャルを秘めているということで、なぜ売れないことが起こりえるかというと、売る「場所」と「値段」が適切ではないということなんだそうで、その最適化を実現するには、「場所」や「値段」を含めて商品の流通を自社のコントロール下に置くことが肝要なようです。

 

 それだけではなく、あらゆる側面において、自らの意思を的確に反映するために、経営判断を経営者のコントロール下に置くことで、自ずと自社の「色」が出てくることでしょうし、この本ではビジョンが徐々に形成されたような印象を受けますが、徐々にミッションやビジョンが形成されていくというのも逆にアリなんじゃないかと思えます。

 

 この本の中で中川さんもおっしゃっていて、ブランディングにしり込みする中小企業の経営者が多いのですが、ブランディングこそ中小企業の生き残る最後の道だということを改めて認識させてくれる本なんじゃないかと、改めて感じさせられた次第でした。