中川政七商店が18人の学生と挑んだ「志」ある商売のはじめかた/中川淳

 

 

 先日、『「売る」から、「売れるへ」。 水野学のブランディングデザイン講義』を紹介しましたが、著者の水野さんがブランディングデザインを手掛けている奈良の生活雑貨工芸品の製造小売業を手掛ける中川政七商店の社長である中川淳さんも、伝統工芸に関する会社を中心にコンサルティングをされているということで、中川さんが東京駅に開設する学生が運営する地方産品のセレクトショップの立ち上げを支援する過程を紹介した本です。

 

 このプロジェクトに参加されている学生さんたちはかなり優秀で、SWOT分析とかポジショニングとかかなりスラスラこなしているような感じですが、それでもかなり事務局側がおぜん立てをして、ミッションやビジョンというそもそも論の部分から丁寧に、各メンバーがハラ落ちするところまで粘り強く取り組まれており、やはりスタートアップには、こういうプロセスが必須なんだなぁ、ということを再認識させられます。

 

 ワタクシも中小企業診断士の受験をしていた時期があって、こういうところの重要性というのは教科書レベルでは語られていることは知っているのですが、成功している大企業を含めて、こういうコンセプトの部分が蔑ろにされていることが多く、だからこそなにかピンチに陥ると、いや想定以上の成功を収めるとなお迷走してしまうことになるのかもしれません。

 

 この本を読んでいると、まあ、どの企業にでも当てはまることではないのかもしれませんが、どうやれば自分たちの存在意義や、それを確固たるモノにするために何をすべきなのかということを固めていくプロセスの一端が垣間見れますし、そういう一見何の役に立つのかわからないけど、コアみたいなものを形成するプロセスをダマされたと思って考えてみることが想像以上の価値を持つんだろうなぁ、ということを思い起こさせてくれる気がしました。