スギハラ・サバイバル/手嶋龍一

 

 

 先日紹介した手嶋龍一さんのインテリジェンス小説『ウルトラ・ダラー』に続く第二弾にあたる小説です。

 

 タイトルにある「スギハラ」というのは「命のビザ」のエピソードで知られる杉原千畝で、”知の怪人”佐藤優さんとのインテリジェンスについての対談本三部作『動乱のインテリジェンス』『知の武装』『賢者の戦略』の中で、杉原千畝がかなり優秀なインテリジェンス・オフィサーだったという横顔について触れられていて、この小説でも「命のビザ」の発給が人道主義的な動機のみならずインテリジェンスの側面があったことを示唆されています。

 

 その「命のビザ」に救われた難民のその後をインテリジェンス的な内容を織り交ぜて語られていくのは、『ウルトラ・ダラー』同様なのですが、『ウルトラ・ダラー』が北朝鮮の偽100ドル札といった、ちょっと世界情勢に関心のある人だったら知っているようなネタではなく、シカゴの先物市場など少々マニアックなネタが多く、正直ワタクシ自身は仕込まれたインテリジェンスネタを読み取れなかったのですが、相棒・佐藤優さんが『現代ビジネス』に寄せられている書評によると、いろいろとスレスレなネタが仕込まれているようで、かなり読者を選ぶ小説だなぁ、という気がしました。(ちょっと、クヤシい…泣)