安倍晋三回顧録

 

 

 2022年7月に銃撃を受けて死去した安倍元首相の回顧録です。

 

 この回顧録は2020~2021年にかけて実施された回顧録作成のためのインタビューをベースに構成されているのですが、2022年1月にいったんほぼほぼ完成していたモノを、安倍氏自身が首相復帰への色気があったのか、本格的な政治活動の再開を受けて、一旦出版を保留されていたモノを、死去を受けて昭惠夫人に改めて出版の打診をしたところ、快諾を得たことで日の目を見たという経緯があるようです。

 

 一旦、保留がかかったことというエピソードがナットクできるだけのあからさまな発言も連発されていますが、まあ、モリカケなど都合の悪いことは国会答弁の頃とそれほど変わらない受け答えになっており、その辺の真相究明は永遠に闇の中…という感じです。

 

 第一次政権で首相となって以降、特に第二次政権のことを中心に語られますが、個人的に印象的なのは外交舞台における各国首脳とのやり取りで、安倍氏自身に結構意に反した動きが多かったからということもあって、オバマ氏とはあまりいい関係になかったような言及が意外です。

 

 それに反してプーチン氏やトランプ氏とはかなりホンネレベルでの交流があったようで、トランプ氏を飼い慣らしていたようなやり取りが印象的です。

 

 あとは、財務省との暗闘の凄まじさが意外で、茶番としか思えない解散をしてまで消費税の税率を上げることを保留した件ではすさまじい反発があったようで、かなり激しい引きずり下ろし工作もあったと振り返られており、森友学園の一連のスキャンダルは財務省が自身の足元を掬うために財務省が描いたシナリオなんじゃないかとまで言っており、復権を目指すんであればこの本が出版されるのはまずかったのかもしれません。

 

 このブログをずっと見てくださっている方はお分かりだと思いますが、ワタクシ自身は安倍氏にかなり否定的なスタンスを取っており、その強権的な姿勢はこの本を読んでも眉を顰めるしかないのですが、自己の保身にしか興味がなさそうでビジョンもなく財務省の飼い犬となっている現首相と比べると、どちらかというと否定的にならざるを得ないとしてもビジョンを持って取り組んでいるだけずっとマシという気はしてしまいます…