ANA苦闘の1000日/高尾泰朗

 

 

 日経ビジネスの記者をされている方が、コロナ禍に伴うANAの苦境とそこからの復活への道筋を紹介された本です。

 

 コロナ禍においては、公共交通機関はいずれも大きなダメージを受けたのですが、航空会社は鉄道会社と比較しても、鉄道がある程度は稼働していたのに対して、飛行機は一時期ほぼ運航がゼロに近づくなど、より大きな影響を受けたことは想像に難くありません。

 

 また、経営体質にしても、鉄道会社が不動産会社などを含めかなり広範に多角化を進めている企業が多いのに対して、航空会社の両巨頭であるANA、JALはいずれもあまり多角化を積極的に進めておらず、ほぼほぼ航空運輸一本足の収入構造だったということもあり、そのこともよりダメージを大きくしたということです。

 

 またANAはJALと比べても、JALが2010年の経営破綻以来、機材の整理など”筋肉質”な経営体制を整えてきたのに対し、ANAはJALの間隙を縫って事業規模を拡大し、コロナ前の空前のインバウンドを受けて、かなりイケイケな体質になりつつあったということもあって、JALと比較してもダメージは大きかったようです。

 

 ただ、コロナ禍を受けての経営判断はかなり俊敏だったということで、キャビンアテンダントの異業種への出向などが話題になりましたが、マイレージサービスの拡充によるファイナンス分野への進出や、機材の適所への適用による最適化など、短期間に矢継ぎ早に対応策を繰り出したのは秀逸だと思えます。

 

 また、今後の展開に備えて、ドローンによる宅配や「空飛ぶタクシー」への先行投資などにも着手しており、ただただ守備的になるのではなく、攻めの施策を苦境に繰り出すところも目を瞠ります。

 

 いよいよアフターコロナが本格化した昨今、ANAの反転攻勢に目が離せないと思わせるモノでした。