恋愛の授業/丘沢静也

 

 

 草食男子などが取りざたされるようになって久しく、恋愛に消極的な若い人が増えているということですが、東京都立大学での「恋愛学」の講義をまとめた本だということです。

 

 シラバス上の科目名は「ドイツ語圏文化論」だということなのですが、授業方針に「オペラ、音楽、バレエ、詩・小説などの名作(の名演)をつまみ食いしながら、恋愛をのぞき見する。」とされていて、「習得できる知識」の項目にこの本のサブタイトル「恋は、傷つく絶好のチャンス。めざせ10連敗」と謳われています。(笑)

 

 実際には「ドイツ語圏文化論」と言いながら日本のドラマも取り上げられていて、映画なり小説なり、オペラなりの恋愛にまつわるシーンを取り上げて、学生がどのように感じたかについてレポートを提出した上で、レポートにかかれた意見について議論するといったカタチのようで、レポートの中には匿名だということもあって、かなり赤裸々に自身の恋愛体験がつづられていて、恋愛における様々な感じ方を垣間見るということです。

 

 ドラマや映画はともかくとして、チェーホフカフカといった文学や『カルメン』などのオペラ、ドガの『エトワール』などの絵画などといった芸術作品を取り上げて、一見そういう高尚(に思える)な世界から、セックスはモチロン、二股や不倫などの下世話極まりないテーマを同列に並べて語るところが、最初はかなり違和感を感じつつも、紙一重というか、そういう清濁併せ呑むことが恋愛、ひいては人間の営みだということが感じられますし、そういう振れ幅の広い体験をすることが、ココロの襞みたいなものを深く刻むことになり、それだけ人間の深みも出るんじゃないかということなのかも知れません。

 

 傷つくことを恐れて恋愛を避ける若い人が多いようですが、きっとそれもその後の人生の大きな肥しになるでしょうし、傷つくことを避け続けることはできないでしょうし、それでも避けようとし続けると著しく耐性が劣ることになり、ちょっとしたことで致命傷を負うことにもなってしまいかねません。

 

 だからこその「めざせ10連敗!」ということなのかもしれませんね!?