まちがえる脳/櫻井芳雄

 

 

 AIの進化とともに脳についての関心も高まっているように思えますが、実は脳というのはAIとは異なり、かなり「まちがえる」ことが多いようで、それでも一見多くの場面で「正しい」と思える働きをしているように見える機能と、そういうアバウトなところがあるが故に、AIがいくら進化しても当面脳の働きを凌駕できないとされる特色について紹介されています。

 

 元々、人間が外界から何らかの刺激を受けた際に、その「刺激」がその通りに脳に伝えられているかというとそういうワケではないようで、いわゆる錯覚というモノが頻繁に起こっているワケですが、そういう「錯覚」が起こっていることについて、刺激を脳に伝えるニューロンが、その刺激に反応するかどうかというのがかなり不確実らしく、30回に1回くらいしか働かないとも言われているようです。

 

 さらには、ニューロンが受けた刺激を伝えようと「点火」したとしても、その情報を伝達するシナプスの働きもニューロンほどではないにせよ、なかなか不安定なんだそうです。

 

 ただ、それでも「正しく」外界の刺激を認識しているように思えるのは、そういうニューロンシナプスの不安的な動作を補う仕組みがあるからだということで、そういう複合的な仕組みが成り立っているからこそ、AIがいくらディープラーニングを進化させたとはいえ、なかなか例外処理がこなせないのに対し、人間の脳の推論が行き届く秘訣のようです。

 

 最終章では脳にまつわる数々の「迷信」についても触れられていて、脳はわずかな割合しか活用されていないということは、この本を読むまではワタクシ自身も信じていたことであり、かなり興味深いトピックが多く、脳の神秘をホンの少し垣間見ることができたような気がします。