ストレス脳/アンデシュ・ハンセン

 

 

 2021年に出版された『スマホ脳』が大ベストセラーとなったスウェーデン精神科医のアンデシュ・ハンセンさんが人類の進化が人間の精神に与える影響について語られた本です。

 

 『スマホ脳』が、スマホが人間の精神に与える影響というかなりフォーカスされた内容だったのに対し、これまでの人類の進化がどう人間の精神に影響、特にネガティブな側面の影響を及ぼしてきたかということなので、かなり哲学的な側面があって難解な部分もありますが、かなり示唆に富んだ内容となっています。

 

 ハンセンさんは、これまでの歴史の中で飛躍的に生命の安全や利便性を向上させてきたにも関わらず、人間の精神に取っては現代が最悪の状況なのではないかということからこの本を執筆されたということです。

 

 確かに数十年前と比較して、精神医学自体も長足の変化を遂げているということですが、精神疾患の罹患者数は急激な右肩上がりですし、自殺者も増加の一途をたどっているということで、人類の進化というモノは必ずしも個々の人間のシアワセにはつながっていないようです。

 

 その原因として、人間の最大の目的である「生存」をし続けるための「本能」という部分の脳の対応は、目の前の事象にあれだけ柔軟な対応を見せるのに対して、ほとんど狩猟採集の時代から進化していないのではないかということで、広がり続ける実際に生活の状況と「本能」が認識している生活のギャップがストレスの拡大につながっているのではないか、ということです。

 

 確かに、都会で生活をしている人の方が地方で生活をしている人と比べて、受けるストレスが少ないんじゃないかという、我々が持っているステレオタイプ的なイメージからしても、そういう考察に何となく正当性を感じるところでもあります。

 

 最後に「10の最も重要な気づき」として、精神疾患を深刻化させないためのヒントを紹介されていますが、とにかく、「運動をすること」と「親しい人との定期的な交流」を意識して取り入れることで、日々受けるストレスを軽減することにつながるということで、忘れないようにしたいモノです。