独学の思考法/山野弘樹

 

 

 若き哲学者が紹介される「独学」の方法論です。

 

 あとがきの中で「独学」について、「すぐ答えの出る(試験問題的な)問いを扱う「達成のための独学」」と「すぐには答えが出ない(抽象的かつ普遍的な)問いを扱う「探求のための独学」」の二つに分けて定義されていて、世にある多くの「独学」本は資格取得的な前者を扱うモノであるのに対し、この本は後者の「独学」について扱われたモノです。

 

 著者の山野さんは若き日にアタマが良くなりたくてひたすら読書に励まれたようなのですが、ある日友人と会話をして、ただ読書するだけでは他人の意見を詰め込んでいるだけでは、他人のコトバを集めているだけに過ぎなくて、自分のアタマの良さにはつながらないことに気づき、読んだ本から自分の意見を形成するための方法論を追求されることになったそうです。

 

 そんな中で「自分の意見」を形成するプロセスとして、

  1.問いを立てる

  2.分節する

  3.要約する

  4.論証する

  5.物語化する

とされており、まずは「問いを立てる」ことで、自分の意見の立脚点をしっかりと定義することが重要だとおっしゃいます。

 

 そのスタート地点を確定した上で、読む本の中から自分の意見を形成するために、ネタを集めるという意味での「分節」、集めたネタを意味のある塊として形成する「要約」、塊を普遍的に受け入れられるモノにする「論証」、関連付けて全体としての「物語化」ということを、レゴを組み立てて一つの作品をつくることになぞらえて紹介されているところがスゴくわかりやすい例えになっていることが印象的です。

 

 また、そうやって自分なりに形成した「意見」が独りよがりなモノにならないように、他者への問いを繰り返して「一般的」なモノに練り上げていくためのプロセスが必要だということを語られているのが目からウロコで、しかもそのプロセスの中で、相手に受け入れられるように、可能な限り相手に対して否定できだったり、独善的だったりするニュアンスを排除した上で、自分の意見の検証をするというのが非常に理にかなっているなぁ、とうならされます。

 

 なかなか、こういう抽象的な「自分の意見」の形成を意識してやろうとする機会は少ないかも知れませんが、こういう思考を意識して励行していると、かなり思考力が高まるだろうなぁ、という気がします。