近現代史からの警告/保阪正康

 

 

 『昭和史』の半藤一利さんと並んで、昭和史の語り部として知られる保阪さんが、明治維新から太平洋戦争に至るまでの歴史の中から現代に通じる教訓について語られた本です。

 

 この本では、復興から壊滅への14年周期説だったり、明治維新から軍国主義への歩みといった日本の近現代史において、現代への教訓も含めたトピックを取り上げておられますが、個人的に印象的だったのが、戦争末期、当時の大蔵省の若手官僚が主計将校としての会計などの任務を担ったということが、戦後の復興に大きな影響を与えたことについて紹介されています。

 

 その時の主計将校の中には、その後首相、蔵相を歴任することになる宮澤喜一氏や、その後政財官界で活躍する幾多の人材を輩出することになったということですが、当時の軍部の会計的な意識が皆無で、戦争の遂行にどれだけの金額が必要になるのかということの試算すらされていなかったようですし、よく言われるように敵であるアメリカ軍と日本軍の規模の差すら見ていなかった(見ようとしていなかった)ことに呆れると同時に怒りを感じていて、その後、ああいう杜撰なことだけはするまい、ということで、戦後復興における合理的な思考に基づく、国家設計に役立ったということで、逆説的ではあるモノの、あの戦争におけるダメダメな部分が行動経済成長の原動力と言えるということについて紹介されています。

 

 明治維新から日露戦争への過程においても、鎖国による不合理を反省した超合理主義的な国家設計により一定の成功を収めたのち、真逆の志向でアメリカに敵対視国家の破滅を招いたワケですが、高度経済成長を成し遂げた後も、同じように無策のままで、このまま破滅に向かってひた走っているんじゃないかと、それ恐ろしい思いをさせられた次第でありました…(泣)