食文化からイギリスを知るための55章/石原孝哉、市川仁、宇野敬

 

 

 食文化を通してイギリスの歴史や社会について語ろうという趣旨の本です。

 

 英国を訪れた方のみならず、英国人自身からもあまりいい評判を聞くことの少ない英国の「食」ですが、この本を読んでいると意外(といっては失礼ですが…)なほど豊潤な食文化を持っていることが伺えますが、じゃあ、なぜあれだけ評判が高くないのかも気になるところです。

 

 歴史的な経緯を見ていると、ローマ帝国支配下にある頃はかなり多様な農作のバリエーションがあったようですが、アングロ・サクソンの支配期にそういった伝統が断ち切られたようで、やっぱりアングロ・サクソンというのはあまり食に感心の少ない人種なのかな!?と思ってしまいますが、フランスなどのラテン系と比べると多少そういう傾向はあるのかもしれませんが、人種的な特徴だけが原因ではないようです。

 

 昨今の不評の直接の要因としては、第二次世界大戦直後の食糧不足の際にチャーチルが取った、栄養素の摂取を優先した食糧政策があるようで、飢餓を回避することを優先する食文化が未だ尾を引いていることにオドロキを禁じえません。

 

 また、英国というとジャガイモが印象的ですが、元々あまり受け入れられていなかったようなのですが、こちらも飢餓を期に一気に広まって国民食的な位置づけになったということがちょっと意外でした。

 

 ただ現在は各国料理も広く受け入れられているとともに、英国伝統の料理も、個人的にはコーニッシュ・パイを筆頭に旅行時に楽しんだ記憶があるので、フランス人を代表とする英国を敵視する国々の不当な見解の影響が大きいんじゃないかという気がしますが、英国を代表するメニューであるフィッシュアンドチップスでそんなに味付けをせずに提供して、塩味やビネガーなどで食べる人が味付けすることも影響しているのかもしれません。

 

 英国を旅行する予定の人や、食の不評故に英国を旅行の選択肢から外している人に是非とも一読してもらいたい気がします。