いつもの毎日。/松浦弥太郎

 

いつもの毎日。衣食住と仕事 (集英社文庫)
 

 

 ドップリと松浦さん著者ループモードに入っておりますが、今日はディープな人生論的なモノからは離れて、松浦さんの日々のこだわりを、「衣食住」と「仕事」に分けて紹介された内容となっています。

 

 ディープなモノとは離れてとはいうモノの、松浦さんだけに日々のこだわりもなかなかに深遠なモノではあります。

 

 「衣」の部分で「トラディショナルから学ぶこと」というパートでおっしゃられていることでこの本全体が象徴されているように思えるのですが、「スタンダードで、トラディショナルで、上質なもの」を身に付けることをものさしにされているということで、「トラディショナル」であることというのは、「ずっと変わらないもの」をつくり続けていく営みは、丹念さ、努力、誠実さによって支えられていると言及しておられて、そういうことモノが多くの人に長年にわたって支持され続けているというのは、人間の自然な営みにフィットするように考慮されているんだな、と思えます。

 

 この本で紹介されているモノのなかで、モノの割に相当な価格がするものも紹介されているのですが、それでもそういう商品が生き残っているというのは、それだけの人々が支持して使用しているということで、必ずしも贅沢品とは言い切れないということなんでしょうね!?

 

 また「仕事」の中で、松浦さんは常にできる限りの準備をされて、あとはコトが成就するだけの状態にしておくとおっしゃられているのですが、モチロンそれでも”想定外”としか思えないことも発生し売るワケですが、可能な限りそういう余地を無くしておくことがプロの仕事なんだなぁ、と改めて感じさせられます。

 

 一見、やり過ぎに見えることでも、スタンダードとされているモノには、それなりの意味があるということなんですよね!?

 

 

 

 

 

孤独を生きる言葉/松浦弥太郎

 

孤独を生きる言葉

孤独を生きる言葉

 

 

 ここのところ松浦さんの著書の中でも、「孤独」と「共感」のバランスに関連する本の紹介が続いておりますが、この本は「孤独」が主たるテーマとなっています。

 

 「おわりに」の冒頭で、「「孤独を生きる」とは、言葉を変えると、自分の愛し方を学ぶことではないか。」と、原稿を書きながら感じられたことに言及されているのですが、ご自身の経験を踏まえて「孤独によって、自分を愛し、人を愛すことを学べば、いつまでも成長できる。そう信じて、今日も一人で歩いてみようと思っています。」とおっしゃられています。

 

 この本は「孤独を生きる」ことについて、1トピック辺り200文字前後で、150ものヒントを紹介されるカタチで構成されています。

 

 最初読み始めた時は、一つ一つのトピックでの言及が少なすぎて物足りないかな!?と感じていたのですが、端的にそれぞれのアドバイスをされているので、まあ、これでいいのかな…

 

 特に印象的だったのが、「大人になるとは孤独を受け入れること」というトピックで、生まれてから両親の庇護の下である程度成長していくのですが、いずれ両親の庇護が及ばないエリアに進んで行かなければならないワケで、先輩や友人などのサポートがあるにせよ、結局最終的な判断を自分で下さなければいけないということで、そういう風におっしゃられているんだな、と思います。

 

 ただ、これまで紹介してきた著書でもあったように、一人では成し遂げられることは限られるということで、自分なりのスタンスは確立しなければ周囲に認められないのは確かなのですが、周囲に認められた上で、何かを成し遂げる上で必要なサポートを得られるような状況を作るのも、オトナとしてのスタンスだとおっしゃられているような気がします。

 

 

 

ポップ・カルチャー/宮台真司+松沢呉一

 

ポップ・カルチャー

ポップ・カルチャー

 

 

 社会学者の宮台センセイがポップ・カルチャーについて語られるというので期待して手に取ってみたのですが、エロ雑誌のライターとの共著で、しかも9割方各分野の人との対談なのですが、宮台センセイが出てくるのは半分くらい…最後に、そのエロ雑誌ライターとの対談なのですが、結構高尚なモードで話してくれていたらオモシロかったのかも知れませんが、援交モードで同レベルの会話をしているので、風俗雑誌の業界対談かよ!?って感じでかなり残念な感じでした。

 

 この本が出版されたのが1999年で、村上隆しりあがり寿など結構な大物も出てくるのですが、あまりに扱っているジャンルが多すぎて、各パートが短すぎるので、ヘタなサブカル雑誌を読んでいるような気がしました。

 

 やっぱり本を直接見ずに手に取ると、時折ハズしてしまいますね…

図解版 なぜ、占い師は信用されるのか?/石井裕之

 

 

 2000年代の自己啓発本ブームの頃、この本の著者である石井さんはカリスマ的な人気を誇っておられたと記憶しているのですが、どうやら2014年には自己啓発の分野からは引退されているんですね!?

 

 この本は石井さんのウリの分野の1つであったコールドリーディングの手法について紹介された本の図解版にあたるムックだということです。

 

 石井さんのコールドリーディングについての著書はこのブログでもかなり以前に紹介しているのですが、『あるニセ占い師の告白』など、結構いかがわしいものなんだけど…というスタンスで紹介されたモノが多く、この本でもアオリ文句に、”「悪用するな!」とは言いません!”とおっしゃっておられて、どっちかというとアヤシさもウリのウチだと考えておられたようです。

 

 コールドリーディングというのは、”コールド”(その場で)”リーディング”(相手のココロを読む)というモノで、必ずしも悪意にだけ用いられるモノというワケではなく、飛び込みの営業なんかをされる方だと、一瞬にして相手のフトコロに飛び込めるようにするためのスキルだということで、真っ当な目的にもかなり有用に使えるモノであるのは間違いなさそうです。

 

 この本のアオリではナンパにも有用!とかって、グレーな雰囲気を醸し出していますが、人生をかけてでも”落とし”たい相手が目の前にいたら、これくらいのことはしてもいいんじゃない!?と思えるようなテクニックだと思えます。

 

 どっちにしても相手をよく見るというのは何らかの交渉をする上では、ある意味”基本のキ”でしょうし、そういう熱意の延長線上なんだったら、アリなのかな!?とは思えます。

 

 しかも、詐欺師の手法を認識しておこうというのは、オレオレ詐欺が横行する昨今でもかなり有用なところがあり、そういう啓蒙も大事なんじゃないかという気はしました。

 

東大合格性のノートはかならず美しい/太田あや

 

 

 ひと頃一世を風靡した東大生のノートについてのムックです。

 

 「東大」「かならず美しい」なんて言うと、以前だとイラッとしていたところですが、この本で出てくる東大合格者の中で、現役時代国語の成績が偏差値30代だったにも関わらず、予備校のセンセイに教わったノートの取り方で80代にまで偏差値を伸ばすという驚異の効果があったということで、まあ、元々はエラかったに違いないのですが、それでもそういう潜在能力を呼び覚ますだけの効果があるんだということのようです。

 

 この本の著者である太田さんは元々教育関係に従事されていて、以前はノートを作るより問題を解く方に重きを置くという考え方だったそうなのですが、東大合格者のノートを見ていると、ノートをまとめることに一定の効果があるのではないかと思いあたって、数多くのノートを見てこられたということです。

 

 そんな中で太田さんが、東大合格者の多くに共通するノートの法則として、

 

  法則1:とにかく文頭は揃える

  法則2:写す必要がなければコピー

  法則3:大胆に余白をとる

  法則4:インデックスを活用

  法則5:ノートは区切りが肝心

  法則6:オリジナルのフォーマットを持つ

  法則7:当然、丁寧に書いている

 

の7つを挙げられています。

 

 必ずしもすべてのノートが7つの法則全てを兼ね備えているワケではないのですが、どのノートも必ずいくつかの要素を含んでいるということです。

 

 多くの東大合格者が直前にノートを見直したりしていたということで、自分の理解を視覚的に振り返り易いカタチになっていたんだろうな、と思われます。

 

 まあ、そういう風にキレイなノートを作れるのは元々アタマがいいからなんだと、デキの悪いワタクシなんかはスネた見方をしてしまいますが、この本に出てくる東大合格者たちも試行錯誤を経て、キレイなノートにたどり着いたということで、やはり才能と努力を兼ね備えないと乗り切れないのかも知れません。

 

 また、そういう風に視覚的に理解しやすい文書を作れるということは将来ビジネスの上でも大きなアドバンテージになりますし、そういう教育が、こういう一部のエリートだけのモノではなく、多くの学生たちが身に付けることができる体制を何とか作ってもらえないモノですかねぇ…

進化しすぎた脳/池谷裕二

 

 

 あけましておめでとうございます。

 今年もこのブログをよろしくお願いいたします。

 

 昨年はコロナ禍の引き籠もりで読む本が枯渇してしまい、5年以上にわたり継続してきた毎日更新の記録を途絶えさせてしまいましたが、今年は、また引きこもりの事態になってしまわない限りは、毎日更新を続けていきたいと思いますので、お付き合いいただけると幸いです。

 

 今年の1冊目は、10/29に紹介した齋藤孝さんの『大人のための読書の全技術』で理系関係の本を読むことを強く推奨されていたのですが、なかなか実行することができておらず、反省の意味もあって、また今年は積極的に自然科学分野の本にも手を伸ばしていこうということで、齋藤先生の本でも推奨されていた池谷先生の脳科学の本にしました。

 

 この本は池谷先生がアメリカに留学されていた時に、現地の日本人高校生に対して行った大脳生理学についての講義をまとめられた本だということで、元々かなり親しみやすい語り口で、かなり難解なはずの脳科学関連のトピックをかなり分かり易くかみ砕かれることで知られる池谷先生ですが、より分かり易さを意識されているので、結構ド文系のワタクシでもある程度はついていけました…(笑)

 

 ただ、話し相手の高校生が慶應のニューヨークの後頭部の学生ということで、かなり優秀だったこともあって、かなりディープな部分までハナシが進んで行って、そうなるとワタクシはだんだんついていけなくなりました…(泣)

 

 それでも脳の機能のキモの部分を語られているところについては、かなりオモシロく、これを聴いた高校生たちにとっては相当”残った”だろうなあ、と思います。

 

 細かい内容をフォローするほど理解はできていないので、印象が強かったことを紹介するのみになってしまいますが、やはり一番覚えているのが、「脳の柔軟性」ということで、例えば何らかの事故などで腕や足を失ったとしても、その状態でカラダ全体の機能を最適化できるよう短期間で調整してしまうところや、状況が変わっても記憶の同質性を感じれるようにするために、敢えて記憶の内容を概要レベルにとどめるようにしているところで、こういう例外処理にも柔軟に対応できるところが、まだまだAIなどでは追いつけないところでしょうし、脳科学のオモシロい所なんでしょうね!?

 

 これをキッカケに今年はガンバって理系本にどんどんトライしていきます!

正直/松浦弥太郎

 

正直 (河出文庫)

正直 (河出文庫)

 

 

 以前、『人生を豊かにしてくれる「お金」と「仕事」の育て方』を紹介した時に、各章末に紹介されている回顧録的なモノを見て、これだけで単行本にしてくれないかな、と言いましたが、この本はそういった本になるのかな…

 

 この本は松浦さんが50歳になる直前に新たなステップを踏み出す前に来し方を振り返って、メンテナンスをしようという意図で書かれたということで、「正直」というキーワードを手掛かりに振り返られたということです。

 

 ただ回顧録!?みたいな言い方をしているのは、それぞれのシーンにおいて起こったことを具体的に記述されているワケではなくて、心象風景というか、その時の感情みたいなものを手掛かりに綴られているので、どういう遍歴なのかがイマイチよくわからないのが残念と言えば残念ですが、松浦さんの考え方がより際立つという側面もあるのかも知れません。

 

 『ひとりでいることみんなとすること』でも「孤独」と「共感」のバランスということをメインテーマにされていましたが、元々松浦さんは割と「孤独」を恐れずに周囲に縛られず自由であることを好まれていたということなので、早くから群れずに一人で行動することが多かったようです。

 

 ただ、だからこそ周囲の一人でいる人と”つながる”ことができたという側面があったということですし、そうやってつながってきた人と、変に妥協することなく付き合ってきたからこそ、次第に周囲から信頼されるようになり、現在の状況を作り出してきたという側面があるようです。

 

 往々にして多くの人は、周りの人の目を気にし過ぎて、自分というモノを見失ってしまうことが少なからずあるとは思うのですが、孤独を恐れずに自信を貫くことこそが真の信頼につながるのかも知れません。

 

 

 ということで、今年”発見”した最も印象深い著者の本を紹介して、今年の投稿を締めくくりたいと思います。

 今年もこのブログに訪問くださってありがとうございました。

 

 今年は思いもしなかったコロナ禍に伴うひきこもり生活で、読む本がなくなってしまい、ひと頃は半年以上もあったバックログも底をつき、5年8ヶ月継続した連続投稿を4/30で途絶えさせてしまうことになりましたが、6月には連続投稿を再開し、結果として349冊の本を紹介することができました。

 

 来年は、再度引きこもりといった事態にならない限りは、毎日投稿を続けていきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。

 

 では、よいお年を!