象徴天皇の旅/井上亮

 

象徴天皇の旅: 平成に築かれた国民との絆 (平凡社新書)

象徴天皇の旅: 平成に築かれた国民との絆 (平凡社新書)

 

 

 宮内庁付きのベテラン記者で、天皇皇后両陛下の国内外への行幸への同行経験が豊かな著者が、天皇陛下行幸を紹介された本です。

 即位した当初から“象徴”であった初めての天皇として陛下は“象徴”たることを如何にすべきかということをとことん突き詰めて考えておられたということで、その現れのひとつが一連の行幸に見られるということだそうです。

 植樹祭や国体などの定例的な行幸のみならず、災害時の慰問なども含め、日本を3周以上した計算になるということですが、それだけ全国をくまなく回った人は存在しないだろうと指摘されていますが、それだけ“象徴”としての想いの強さがあったのでしょう。

 特に退位が決まる前後には、先の戦争に関連する国内外への行幸があり、高齢の両陛下にはかなり過酷なスケジュールであったにも関わらず、自ら率先して完遂されたようです。

 また東日本大震災を始めとして自然災害の被災地への慰問にも、現地の状況が許すようになればいち早く、しかも度々足を運ばれて、被災者に寄り添う姿勢を貫かれています。

 だからこそ、高齢により中途半端な活動しかできなくなることが許せなくて退位の希望を表明するという決断になったのでしょうが、そういう陛下の想いには頭が下がるばかりです。

 退位後は、是非ゆっくりお体を休めてもらいたいものです。