日本人の給料はなぜこんなに安いのか/坂口孝則

 

 

 日テレの朝の情報番組『スッキリ』でのコメンテーターとしての活動でも知られる調達・購買を中心としたコンサルティングを手がけられている坂口さんが語られる「コスト」と「リターン」の経済学です。

 

 タイトルに『日本人の給料はなぜこんなに安いのか』とあるので、デービッド・アトキンソンさんが『日本人の勝算』を始めとする近著で再三力説されている、日本企業の労働生産性の低さと関連した給与水準の低さを語られるのかと思って手に取ったのですが、このタイトルは、冒頭の1章のテーマであって、あくまでもこの本全体を通してのテーマは「コスト」と「リターン」の経済学ということのようで、「日本人の給料」「年金」「消費税増税」「持ち家/借家」といったテーマを「コスト」と「リターン」の観点から語られています。

 

 坂口さんは出世作営業と詐欺のあいだ』にも見られたように、ビミョーにトリッキーなアプローチをしつつも、結構分かり易くそこにたどり着く道筋を丁寧に示されるということもあって、意外でありながらも最終的に結構ナットク感があるという感じで、どれもなかなか議論のあるテーマではありながらも、同意するかどうかは別として、意見としては理解しやすいものでした。

 

 特に永遠のテーマとも言える「持ち家/借家」についても、ご自身は、ご家族を含めて全く転居を厭わないということもあって、積極的に持ち家を支持するワケではないのですが、日本人の多くの人はあまり深く自分の長期のマネープランを考えないこともあって、老後の生活資金の調達などを考えれば持ち家が向いている人が多いというのは、非常に分かり易いですし、今まであまり見なかったアプローチかも知れません。

 

 ということで、おカネについてのご自身のスタンスを整理するという意味でも、有意義な本かも知れません。