聖書、コーラン、仏典/中村圭志

 

 

 こちらは先日紹介した『教養としての宗教入門』の続編と言うか応用編というか、前作が宗教を人々に及ぼす影響と言う観点で全般的に俯瞰したモノだったのですが、こちらはそれぞれの経典を宗教学的に見ることで、それぞれの教えが具体的にどういう風に人々に作用しているのかということを紹介したモノです。

 

 それなりに段階を踏んでは来ましたが、経典を見るというとちょっと戦々恐々な部分も無きにしも非ずでしたが、最初がユダヤ教の経典ということで旧約聖書の紹介なので、ノアの箱舟とかギリギリ馴染みのある内容なんでちょっとホッとします。

 

 それぞれの経典の成り立ちから入る辺りはいいのですが、重要な部分の文言の解釈にまで立ち入っているので、特に仏教の経典あたりはかなり読み込むのはツラかったのですが、経典の教えそのものというよりも俯瞰的に理解するのが目的なので、まぁいいか!?ということなんですが…

 

 ただ面白い表現をしておられたのが、上座部仏教から大乗仏教に移行していくあたりで、次第に自力での解脱を指向するところから救済に移行していくあたりが、厳しい戒律で人々の行動を戒めたユダヤ教キリスト教になって救済を指向した流れと似ているということで、宗教が広く受け入れられていく中で、人々の困難を和らげようとする方向に行くのは自然な流れなのかも知れません。

 

 そんな中でそれなりに厳しい戒律を課しながらも、救済の色彩も帯びたイスラム教のバランスは目を瞠るところがあり、やはり後発の宗教ならではの完成度と言えるのかも知れません。