産まないことは「逃げ」ですか?/吉田潮

 

 

 個人的には夕方のフジテレビのニュースが『みんなのニュース』だった頃、レギュラーコメンテーターのやくみつるさんがお休みの時に、この本の著者である吉田潮さんが出演されるのが楽しみで、その毒がありながら、どこか対象への愛を感じさせるコメントが印象的でした。

 

 その吉田さんが、ご自身の性愛や妊活の経験を通して、女性が無意識に背負わされているモノや多様性を追い求めることの困難を語られます。

 

 テレビで見た印象からすると、失礼ながら勝手に吉田さんは独身だと思っていたのですが、それはワタクシだけでなく、吉田さんの周囲の人も吉田さんが結婚された時に驚かれたということなので、見た目のイメージのサバサバキャラはそれほど実態とかけ離れたモノではなさそうで、生い立ちからして、子供を持つようにプレッシャーを受けるようなご家族でも無いようで、お姉さまは最初から子供を持たないと決められていたとのことで、ご自身も元々そのつもりはなく、あくまでもセックスは快楽のためのモノだったということです。

 

 ただ、2回目の結婚の際に「子供欲しい病」に罹ったとおっしゃっておられ、不妊治療も経た上で、結局子供を持つことを諦められたようなのですが、「子供欲しい病」罹患の経験について、ご自身では意識していなかったようですが、有形無形に「女性は子供を産むものだ」という“世間の常識”に捉われてていたのではないかと思わされます。

 

 モチロン子供を産んでいなくてもシアワセな人生を送られている人もいらっしゃるはずで、そういう意味で特に歳を取られてから周囲の人に「寂しいでしょう!?」と言われガチなことについて、”余計なお世話だよ!”ということだということなんでしょうけど、あくまでも吉田さん自身妊活を経たからこそ、特定の考え方が「当たり前」だとすることの危険性というか、理不尽さについて語られています。

 

 子供を持つにせよ、持たないにせよ、あくまでも自身とパートナーとの合意だけがベースになっていることが、二人にとっても、生まれてくる子供たちにとっても最も幸せにつながりやすいはずで、そういう選択に対するプレッシャーができるだけ無いようにすることが、社会全体のシアワセの総量を増やすことになるのかも知れません。