増補版国策捜査/青木理

 

 

 「国策捜査」というと"知の怪人”佐藤優さんを思い出すのですが、元々このコトバが人々に膾炙されるようになったのは、佐藤さんの作家デビュー作『国家の罠』がキッカケだったということが、この本の中でも紹介されています。

 

 佐藤さんの本で繰り返し指摘されているように、検索特に特捜に目をつけられたらほぼほぼ有罪にされるのは間違いないということで、99.9%という北朝鮮かよ!?とツッコミたくなるくらいの有罪率なんだそうで、『私は負けない』で紹介された村木厚子さんの「郵政不正事件」での無罪は特捜のオウンゴール友行くべき稀有な事例みたいです。

 

 この本では「日本の司法を考える会」というワークショップで、「国策捜査」の餌食となった人たちの体験談を元に、特捜の「やり口」を紹介したもので、14人もの「被害者」の証言が紹介され、モチロン佐藤さんも登場していますし、鈴木宗男さんやKSD事件での村上正邦さんなど名だたる「被害者」たちが登場します。

 

 基本的なフレームワークとしては、基本的には検察側が描いたストーリーに沿った調書を被疑者に提示して、基本的にはその調書の内容と異なる証言は一切受け付けず、保釈をちらつかせたり、恫喝したりということで調書への署名を迫るというモノで、さらには逮捕以前にも、検察のストーリー通りの報道を垂れ流してくれるメディアに情報をリークし、被疑者を悪役に仕立てる空気を醸成するということも日常茶飯事なんだそうです。

 

 警察も概ね検察の意向に沿った捜査をされるだけではなく、世間知らずの裁判所はほぼほぼ検察の言うがままだということで、日本人は徴用工判決で韓国の司法制度を非難しますが、日本も北朝鮮顔負けのフレームワークが出来上がってしまっているようです。

 

 さらには、被疑者を弁護すべき弁護士までもが、「ヤメ検」といわれる元検察官の弁護士が、検察のストーリーを受け入れるよう働きかけることすらあるようで、ホントに恐ろしい国家だと戦慄を覚えます。

 

 ゴーン氏の逃亡のニュースを聞いたときは、とんでもないヤツだと思いましたが、実際の彼の行状が同課は別として、ああいったカタチで検察の暗部がクローズアップされ、国際的な問題提起につながったということは、ひょっとしたら感謝すべきことなのかも知れないとすら感じました。