為末メソッド/為末大

 

 

 今なお、日本人男子陸上のトラック競技個人種目で末續慎吾と並んで二人しかいない世界大会メダリストのうちの一人「侍ハードラー」こと為末大さんが選手時代から、2012年の競技引退後の約10年、投資家や執筆者、テレビ出演など多くのジャンルで成功を収めてきた100の秘訣を教えてくれる本です。

 

 100もあるので、自己啓発書なんかをよく読んでいる人にとってはどこかで見たようなアドバイスもモチロン含まれてはいるのですが、やはりアスリートからビジネスパーソンへと変貌を遂げて成功した人ならではだと思わせるヒントも多く、どのアドバイスが刺さるかは人によって違うとは思うのですが、一度サラッと目を通してみれば、何か刺さるモノがあるに違いありません。

 

 為末さんは現役時代「走る哲学者」との異名もあり、かなり理詰めで教義に取組んでおられたイメージがあるので意外だったのですが、冒頭で取り上げられているのが「走りながら考える。正解を求めすぎない。」だったのに多少面食らったのですが、為末さん自身考えすぎて行き詰まったことがあったからこそ、一番にこれを言っておきたかったのかも知れません。

 

 個人的に一番気になったのが、「「憧れの罠」に注意する。」というモノで、人間はついつい自分がウマくできないことに憧れてしまうワケですが、為末さんは「「息を吸うようにやれること」こそが、その人の「才能」だということ」とおっしゃっておられて、確かに向上心を持って何かに取組むということは大事なことなのかも知れませんんが、自然に自分ができることの中で、実は独自の能力と言えるモノがないかどうか確認してみるのも大事なのかも知れません。

 

 また、「危機感が安心感を生み、安心感が危機を生む」というのは、理屈ではわかってはいるんだけれども、調子よく行っているとどうしても人間忘れがちなモノで、日々、このフレーズを見なおして緊張感を取り戻したいと感じさせられます。

 

 といった具合に、モチロンこれ以外にも刺さるフレーズが満載で、備忘のフセンだらけになってしまって困っているのですが、きっと皆さんも同じように刺さるコトバが多く見つかる本なんじゃないかと思います。