ヤマザキマリの世界逍遥録

 

 

 『テルマエ・ロマエ』で知られる漫画家のヤマザキマリさんがJALの機内誌に寄せられた紀行文の連載をまとめた本です。

 

 このブログで紹介した自伝的な著書『地球生まれで旅育ち』でもわかるように、ヤマザキさんは世界を股にかけて壮絶な人生を歩んでこられただけあって、紹介されている旅先も旅先で触れられるトピックの内容も、一味も二味も趣が異なる興味深いモノとなっています。

 

 航空会社の機内誌や旅行雑誌なんかでも、敢えて著名な観光地を避けて、知る人ぞ知るところだったり、如何にも観光地的なモノを避けて、地域を生きる人々に溶け込んで…といったようなわざとらしい企画も見受けられますが、この本ではヤマザキさんが実際に住まれていたフィレンツェリスボン、ダンナ様が単身赴任をされていたシカゴ、息子さんが留学されていたハワイなど、ゆかりのある地域を選ばれていることもあり、ホンの2ページ程度の紙幅であるにもかかわらず、さりげなく背景となる歴史や地域に息づく伝統が盛り込まれていて、否が応にも内容に奥深さを感じさせます。

 

 まあ、そういう豊かな経験があってこその旅の愉しみでしょうし、フツーの日本人である我々には望みようのない深遠な世界ですが、こういう深みで旅を愉しめたら、と思わざるを得ません…