最高のコーチは教えない。/吉井理人

 

 

 近鉄、ヤクルト、ニューヨーク・メッツなどで投手として活躍し、引退後は日本ハムやロッテなどで投手コーチとして、ダルビッシュ有大谷翔平、佐々木朗希といった名だたる名投手の育成に大きく関わった吉井理人さんのコーチ論です。

 

 吉井さんが選手として活躍された頃のコーチは現役時の実績や経験を教えるというか、押し付けるようなスタイルのコーチングが一般的で、今なおそういうスタイルのコーチングが大勢を占めているだけに、吉井さんのこういう主旨での著書が求められるんでしょうけど、吉井さんがメジャーリーグでプレーされている際にアメリカで受けた、選手の特性を生かそうとするコーチングが、現在の吉井さんのコーチングスタイルに大きな影響を与えているようです。

 

 吉井さん自身もそういうアメリカ的なスタイルを理想と考えながらも、コーチになられた当初は、ついついご自身が良かれと思うことを知らず知らずのうちに押しつけてしまって、結果として選手が目が出ないままとなってしまい、潰してしまったという悔恨を抱えておられるようで、そういう経験も踏まえて、選手自身の特性や望む方向性をじっくり会話しながら共に探って言った上で、育成の方向性を考えて行こうとされているようで、そういう思考錯誤の結果、ダルビッシュ投手や大谷投手のような目覚ましい結果につながったということのようです。

 

 ビジネスコーチングの考え方に馴染んでいる方々からすれば、特に目新しいことでは無いかも知れませんが、プロ野球という旧弊に雁字搦めになりがちな世界でこれだけの取組みを押し通してこられた行動力と胆力は驚嘆すべきモノだと思われ、今後も是非とも結果でオールドスクールを黙らせて欲しい所です。