歴史像を伝える/成田龍一

 

 

 以前、この『歴史総合を学ぶ』シリーズの1冊目の『世界史の考え方』を紹介して、あまりにオモシロくないので、こんなカリキュラムで学ばされる高校生は悲劇やなぁ…と嘆息したくなりましたが、サブタイトルを見ずにこの本を手に取ってしまったのですが、こちらはどうでしょうか…

 

 「歴史総合」のカリキュラムを考える上で、如何にして歴史を描いてという「歴史叙述」の部分と、それをどう学生たちに伝えるかという「歴史実践」に分けて語られているというのは、プロセスとしていいんですが、この本でもまた「ジェンダー史」なんてニッチなことを言いだすので、どうなることかとおもっていたら、1/3くらい過ぎたところで、なんとなくツジツマがあってきます。

 

 「歴史総合」のカバー範囲が近代史だということで、近代史の大きな潮流として「近代化」「大衆化」「グローバル化」が大きな特徴だということで、そういう大きな潮流に添って、そういった特徴をよく表している事象を取り上げて語るというのは、非常に構造的に理解しやすく、立体的で「使える」知識にする上で有用だと思います。

 

 また、従来の歴史教育だと文化面の叙述が浮いていたのですが、その時代の市井の人からみた社会を積み上げるという方法論で、政治も経済も文化も同じ土俵に乗せることができて、感覚的にも現代の我々と比較しての理解と言ったことがやりやすく、学生の興味もソソりやすいんじゃないかと思います。

 

 そんな中で「大衆化」の一環としてジェンダー論我語られているのですが、平塚らいてう市川房枝らの婦人参政権運動に関する叙述をジェンダー論という大きな流れの中で語るのは意義深いことだと思えます。

 

 まあ、前作が細々と何を言いたいのかわからないモノで辟易としましたが、これだったら今高校一年生の次女もそれなりに興味を示すんじゃないかと思えました。