日本の国益/小原雅博

 

 

 外交官から国際関係を専門とする研究者に転身され中国で教鞭を取られたこともあるという方が語られる「国益」を軸とした外交の在り方を語られた本です。

 

 よくニュースなんかで政治家が「国益を損なう」みたいなことを言っているのを目にして、なんとなくわかったような気になっていましたが、この本ではそもそも「国益」って何!?というところから話を始められていて、ちょっと目を覚まさせられた気がしました。

 

 もうちょっとそもそも論を遡ってみると「国家」って何なんだということになりますが、これはワタクシが大学時代専攻した国際法のイロハであって、「一定の領域」「そこに居住する人」「実効的支配を及ぼす政府」の3つの最低限の存立要件となって、そういう国家の利益が何なのかというと、「国民の安全、領土の防衛、主権の確保」が最低限の「死活的国益」となるということです。

 

 ただそれだけでは国民がナットクしてくれなかったりするので、「国家の繁栄」みたいなものが最低限の要求を満たした後の二次的な欲求になるワケですが、それが領土の拡大だったり、経済的な繁栄の確保だったりするワケで、しかもその実現の手段というのが多岐に渡るということです。

 

 まあ、現時点ではロシアや中国みたいな国を別とすれば、領土の拡大を志向する国家・国民も少ない状況ではあるのですが、これまでの歴史的な経緯も含めて、国益同士がぶつかった場合の解決の方法論なども含めて語られていて、外交だったり、ウマく行かなければ戦争だったりするワケです。

 

 この本自体は2018年の出版なんで、オバマ政権がアメリカが「世界の警察官」たる立場を放棄して、自国の利益を優先するトランプ大統領が就任した状況で、中国が覇権を志向している状況で、如何に日本が国家・国民の安全を主とした国益をどう確保するかということについて語られているワケですが、必ずしもアメリカがアテになるとは限らないということを認識した上で、今後の在り方を考えていく必要性を示唆されており、いよいよムズカしいかじ取りが今後要求されることになりそうです。