職業としての官僚/嶋田博子

 

 

 1986年から2019年まで人事院に勤務され現在は京都大学公共政策大学院で教鞭を取られている方が紹介される”官僚”の実態です。

 

 一時期留学をされていた以外は一貫して人事院の業務に従事されていたということもあって、どちらかというと官僚の業務面というよりも、労務面や官僚を取り巻く制度などにフォーカスした書籍になっています。

 

 かつて、高度経済成長期には”世界最強のシンクタンク”とも擬せられ、日本の頭脳の粋が集ったと言われる日本の中央官庁も、今や東大卒の官僚が15%程度と、全盛期の半分以下となり、また一旦入庁した有為の人材も先輩官僚の勤務状況ややりがいを見て数年で離職するという事態が急増していて、コロナ禍への厚労省の体たらくをみてもわかるように、質量共に劣化が否めない状況となっています。

 

 最近では、退庁するのは日付が変わってからという状況は無くなりつつあるようですが、それでも国会対応の時期には泊まり込みといった状況は避けられないようですし、定年まで勤めることは稀なのにも関わらず、世論に配慮していわゆる天下りもしにくいということで、うまみもやりがいもなくなって、そりゃ努めようとする人は少なくなるよな!?と気の毒になってきます。

 

 しかも、第二次安倍政権時に発足した内閣人事局のせいで、高級官僚は官邸の方ばかり向いて仕事をせざるを得ないということで、長期の国家観なんて持ちようがないですよね…そういった絶望的な状況にも関わらず官僚を志す奇特な人のために様々な施策は講じられているようですが、止血にすらならないようにも思え、こういうところにも日本の行く末の暗さが反映されているように感じてしまいました。