上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!/上野千鶴子、田房永子

 

 

 先日、『最後の講義完全版 これからの時代を生きるあなたへ』での理路整然としたフェミニズム論にいたく感銘を受けたので、改めてこういう本を手に取ってみたのですが、対談相手の田房永子フェミニズムにまつわるマンガを書かれていることもあって一家言ある方なので、割と田房さんのご経験を踏まえてのフェミニズム論という感じで、体系的にフェミニズムについて紹介しようというモノではありません。

 

 ちょうど上野さんと田房さんが親子くらいの年齢差ということもあり、田房さんがご自身と母親との葛藤について語られていて、往々にして日本のムスメを持つ母親というのは、自身の経験への悔恨をムスメに晴らしてもらいたいという望みを持っていて、時代が変わっているにも関わらず、それを顧慮しないアドバイスをムスメに押しつけて、またそのことがムスメにとっての悔恨を生み出すという負のスパイラルを生み出しているといいます。

 

 逆に旧来的な価値観で育てられたムスコは、悔恨を押し付けられたムスメとは真逆の価値観で育っており、そういう二人が結婚した場合にどういう葛藤が起きるのかということで、オトコの方は都合よくこの本では「A面」と言われていますが、『最後の講義完全版 これからの時代を生きるあなたへ』でいう経済活動の内数に含まれた世界を中心にしていればいいのに対し、奥さまは「B面」たる経済活動の外側とされる私的生活だけでなく、社会的生活まで担うことになってずっと「A面」と「B面」を行き来しなくてはいけなくなった生活が、前の世代の思い描いたキャリアなのか!?ということになってしまいます。

 

 そんな中でお二方はダンナさまを「B面」に引きずり込まなければ、ということなのですが、なかなかその軋轢に堪え切れる夫妻というのも稀なのかな、という気もします。

 

 ワタクシ自身、結婚当時かなり旧来的な考えの下に、ヨメも出産を機に退職をして子育てに専念したことに悔恨を抱いているようで、そのことには大いに反省していて、可能な限り、家事や子育てに参画すべきだったと思っていて、今後はそうなって欲しいと今更ながら思うのですが、いざその頃にそういう風に説き伏せられていたら、どういう態度を取っていたのか…30年近く自分を形成してきた価値観を根底から否定されてどういう態度になるのか…ということもあって、こういう価値観ってきっと世代を超えて矯正を受け継がないといけないのかも知れません。