いつもより具体的な本づくりの話を。/北尾修一

 

 

 百万年書房という出版社を主宰されている北尾修一さんが、浅草の書店で開催された同タイトルのイベントで語られた、山田真哉さんの『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』やの杉山茂樹さんの『4-2-3-1』を手掛けた編集者である柿内芳文さんなどなだたる編集者が、同イベントの他のセッションで話された内容も交えて、詳細に本づくりについて語られた本です。

 

 セミナー的なイベントのエッセンスから構成された本でありながら、かなり体系的・網羅的に「本づくり」のプロセスを、企画や著者へのコンタクトから、製作、出版、プロモーション、トラブル対応に至るまで詳細に紹介されており、それぞれのプロセスにおいて、名だたる編集者のこだわりを織り交ぜるという、本好きにとってはなかなかタマラない企画の本となっています。

 

 各プロセスを見ると感じるのは、企画においては切れ者のマーケッターだったり、怜悧な経理マンの素養だったり、製作においてはアーティスティックな素養や、ガンコなモノづくりの職人的な素養など、有能な編集者となるにはこういう様々な素養を兼ね備えていなくてはならないということがよくわかり、このブログで時折編集者の姿勢をディスりますが、ちょっと遠慮しなくては…と思ってしまう程、稀有な才能が必要が必要であることが伺えます。

 

 この本では冒頭で、「定価1,500円から2,000円くらいの本を年に3、4冊つくって、それぞれ2,000人くらいの読者が買ってくれれば、そこそこ暮らしていけますよ。まずは副業として如何ですか?」とおっしゃっておられて、確かに丹念に各プロセスを紹介されていますが、北尾さん自身も『クイック・ジャパン』の編集者を務められるなど敏腕の編集者であり、そういう経験や人脈があるからこそできることで、なかなかポッと出てできることではないなぁ、と思ってしまいます。

 

 でも、それでもやってみたい!と思う程、本を愛する人はかなり参考になる本だと思いますし、編集者の方々がこんなアツい想いで本を作られているんだなぁ、ということを実感するためにも、是非是非手に取ってもらいたい本です。