奈良時代/木本好信

 

 

 ワタクシ自身、一時期は考古学者になることもアタマをよぎった時期がある程の歴史好きで、その中でも特に奈良時代への興味が強いということもあって、こんな本が出ているのを知って飛びつきました!(笑)

 

 著者の木本さんはご出身の淡路でご自宅の近辺に淳仁天皇の御陵があるのを不思議に思いながら見ていたのが歴史を志したキッカケだということで特に奈良時代に興味を持たれて、そのまま奈良時代を中心とした日本古代政治史の研究家になられたということで、勝手に親近感を抱いています。

 

 個人的には奈良時代というと、大仏建立や鑑真和上による戒律の伝来など仏教に大きな影響を受けた華やかな天平文化の印象が強いですが、この本では血で血を洗う激しい権力闘争が主要なテーマとなっています。

 

 絶対的な権威を誇った天武天皇からその妻の持統天皇の統治を経て、次第に天皇の絶対的権力から側近への権力の比重が移る中、藤原不比等長屋王藤原四家橘諸兄藤原仲麻呂道鏡へと権力者が移り変わる中、高校の教科書に出て来そうなモノだけでも、長屋王の変藤原広嗣の乱橘奈良麻呂の変、恵美押勝の変と70年程とされる奈良時代にこれだけの大乱があったことに改めて驚かされます。

 

 その後、平安時代に入って藤原式家が権力基盤を盤石にしていくに従い、政情が安定していくことになるのですが、天皇親政から摂関政治に至るまでの過渡期としての騒乱の時代と捉えられるようで、言われてみればそうなのですが、個人的にはかなり意外な気がしました。

 

 そんな中でやはり一番印象的だったのが、称徳天皇の寵愛を得て僧籍で天皇家とは何の縁もない中で皇位を窺った道鏡の台頭で、寵愛した称徳天皇にも歴史的にかなり厳しい評価が下されていることは、仕方がないことなのかな!?という気はしますが、和気清麻呂の勇気ある宣託の伝達がなければ、今頃日本はどうなっていたんだろう…と空恐ろしい想いをさせられた次第でした。