失敗しない定年延長/石黒太郎

 

 

 人事関連のコンサルティングを手掛けられている方が定年延長のあるべき姿を語られた本です。

 

 一応、ターゲットとしては、人事に携わられている方、人材マネジメントのことを考えないといけない経営層、そして定年を見据えた就労者の方ということなのですが、色彩としては経営者が一番のターゲットと思っていいかと思います。

 

 この本では、終身雇用・年功序列のいわゆる日本的人事システムの沿革と、そのことが定年延長に及ぼす影響を語られた上で、少子高齢化の中、定年を間近にしたシニア層の有効活用のために、多くの日本企業で未だハバを利かせていると思われる日本的な人事システムを転換するための好機だとされています。

 

 というのも、昨今、欧米型の職務に対して人を割り当てる「ジョブ型」雇用に対して、人に対して職務を割り当てる日本型を「メンバーシップ型」雇用と言われるようになりましたが、メンバーシップ型では職務と給与の間に相関性が見いだせなくなり、価値の乖離が起こっているということで、そのため同じ仕事をしていても役職定年などでイッキに給与が減ってモチベーションを著しく低下させたり、正規雇用と非正規雇用で同じ仕事をしていても給与格差が出るといった矛盾を生んでしまっていたという事情があります。

 

 ということで、日本の雇用制度をイッキに「ジョブ型」にしてしまえば、日本の人事制度における問題を、かなり多くの範囲で解決できるということで、雇用の際に同意した職務内容である「ジョブ・ディスクリプション」に基づいて給与を決めていれば、定年延長の際も、職務内容の調整で自動的に給与が決まり、ナットク感が担保されるということです。

 

 まあ、その転換というのがハンパじゃなく大変だとは思いますが、結局そこに手を付けるしかないんでしょうねぇ…