最高学府はバカだらけ/石渡嶺司

 

 

 大学関連のテーマを専門に手掛けられているライターの方が、大学、学生、親それぞれ観点から、大学の堕落と言われる状況になっている要因を語られた本です。

 

 ワタクシが大学生だった1980年代末~1990年代初頭においても、特に私大文系は「大学レジャーランド」などと揶揄されて知的レベルの低下が取り沙汰されていたので、「最近の若いモンは…」みたいなフレーズ同様、いつの世もそういった言われ方をするのかもしれませんが、”知の怪人”佐藤優さんや池上彰さんの教育論なんかを見ていると、明らかに両氏が大学生だった頃の取り組みなんかと比べると知的レベルが著しく下がっていると思わざるを得ないところもあり、関係者三者からの観点での要因を探るという趣旨は有意義な気がします。

 

 この本の出版は2008年と四半世紀も前になるので、かなり状況は変わっているとは思うのですが、この頃から多くの大学で定員割れを起こして、「大学全入時代」などと言われ始めたということで、その後はより状況は悪化していると思われるので、そういう意味ではその時点での分析というのは一定の意義があると思われます。

 

 特に、知的レベル低下に大きな影響を及ぼしたと思われるのが、学生を確保しようとする大学側が推薦入試に重点をシフトしたことが挙げられており、さらにはロクに試験を課そうとすらしないAO入試が推薦入試の枠外で実施され始めたことがあるようで、せめてもの受験勉強すらロクにしないで大学生になってしまう学生がかなりの割合を占めるようになってしまったことがあるようです。

 

 ただ、そうなると大学の講義の受講にも支障をきたすほど学力レベルが芳しくない学生のサポートということで、ヒドいところでは中学生レベルの数学を教えなくてはならないような状況もあるようです。

 

 これが25年前ということで、そういう結果を受けて順調に日本の国力が低下しているのは、ある意味仕方がないというか、予見できる将来だったんだなぁ、と改めてナットクさせられた次第でした…