バカの災厄/池田清彦

 

 

 歯に衣着せぬ評論などでも知られる生物学者池田清彦さんが「バカ」の生態について語られます。

 

 この本で言う「バカ」と言うのは、モノを知らなかったり、物事の処理速度が遅いとかというのではなく、「概念が孕む同一性は一位に決まる」と思い込んでいる人々だと冒頭で定義されていて、その定義自体が観念的でわかりにくいのですが、要は志向の柔軟性に欠ける人々で、「自分は正しい」と疑いもなく信じていて、自分がこうだと信じていること以外のことを間違いだとする人で、そういう人々の多くがそれと異なる考えを持つ人に攻撃的なまでに否定をしたがる傾向があるようです。

 

 そういった「バカ」が日本においてコロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻でより顕著になり、一部はマスク警察や自粛警察などとなってネット上で大暴れしていたのはよく知られるところですが、文化が異なれば振る舞いも異なるというのは、フツーに社会性があれば身に着けているはずなのですが、自分の正しさに拘泥して、大きなお世話なのに他人にもその考え方を強いるという向きが少なからずいるようです。

 

 そういった「バカ」の発生に日本の教育が寄与しているところが多分にあるということを指摘されていて、なんでもかんでも「正解」を求めることが志向の柔軟性を低下させることにつながり、そういう「バカ」の再生産をセッセと行っている側面もあるようです。

 

 イノベーションの源泉は多様な要素の組合せによって生まれるものであり、そういった「バカ」が跋扈する日本が低迷しているのは、ある意味必然なのかもしれないと思うと、暗澹たる気分にさせられます…