古代国家はいつ成立したか/都出比呂志

 

 

 古代史の研究家の方が、発掘などの研究の成果、文献の分析、さらにはマックス・ウェーバー政治学なども交えて、日本における「国家」の成立について語られた本です。

 

 200ページ余りの本で、「国家」の成立についての論評は最終章の30ページ強で、それまでの170ページ弱は古代史の「国家」にまつわる研究で、邪馬台国前後から律令国家の成立に至るまでの政権における統治形態について紹介されています。

 

 邪馬台国の時点で、すでに支配・被支配の関係が出来上がっていて、徴税の仕組みがあることが魏志倭人伝で紹介されているということで、一定の統治が行われていたようで、さらに4~5世紀とされる倭の五王の時代には、当時の権力の源泉とされた鉄の確保のために、現在の中国・朝鮮半島と盛んに外交が繰り広げられてきたことを指摘されています。

 

 ただ、そういった状況が「国家」と言えるかどうかというのは議論が分かれるところのようで、「国家」としての成立にコンセンサスができているのは律令国家の成立というのが古代史界の定説だということですが、それまでの過程で「地域国家」から律令下の「統一国家」が出来上がるまでに、事実上、「統一国家」としての形態が出来上がっている状況があるはずだと指摘されています。

 

 そんな中で判断の基準となるのが、「中央集権官僚制」が成立しているかどうかが「統一国家」成立の基準となるということで、天武・持統天皇の時期には概ね「統一国家」としての統治形態が整備されていると主張されています。

 

 その説についての正否を評価する知識はありませんが、邪馬台国論争(著者の都出さんは畿内説支持)や朝鮮半島との盛んな交流など、古代史における興味深い研究成果の紹介も多く、古代史に興味のある方にとっては、かなりワクワクさせられるモノとなっておりますので、是非一読の程を!