給料の上げ方/デービッド・アトキンソン

 

 

 『新・観光立国論』で一躍名を馳せたアトキンソンさんですが、最近は『日本再生は、生産性向上しかない!』など生産性の向上に関する提言が目立っており、この本も長期低迷する日本人の給与を如何にして上げるかということを語られています。

 

 なぜ日本人の給料が上がらないかということをアトキンソンさんが一言でいうと、「日本の労働者の賃金交渉力が著しく低い」ことに帰結するということで、それどころか賃上げ交渉自体、いつか調子が良くなったら上がるでしょ!?みたいな感じで、端っから放棄しているような状況の中で、経営者は賃上げを考えるどころか、給料を上げなくていいんだから、その分価格を下げて拡販しようという横着な経営方針で経営者、労働者双方がジリ貧になって行ったのが、ここ30年の日本人の給料が上がらなかったカラクリのようです。

 

 じゃあ今後、どうすれば給料が上がるのかということになるとかなりシンプルで、労働者が自らガンガン賃上げ交渉をしていくということで、自分の働きに見合った給与を払わない会社なんか、サッサと見捨ててしまえばいいということだそうです。

 

 そんなことしたら食い詰めてしまう…と思われるかもしれませんが、いま日本は空前の人手不足ですし、それでもスキルがなくて…という人は海外に出て飲食店でバイトした方がよっぽど稼げるような状況ですから、賃上げを渋って安売りでしか売上を上げれない会社なんか、とっとと見切ってしまった方がいいということです。

 

 転職する際も、ちゃんと生産性を向上させようとする意図があるかどうか、市場の拡大にチャレンジしているかどうか、やたらと内部留保を確保しようとするのではなく正当な労働分配をしているかなど、成長を志向しているかどうかを確認した上で応募すべきだということで、労働分配率を抑えて値下げでしか売上をあげられないような企業にはさっさと退場していただくことこそが、人口減少が止まらない日本においての生き残りの策だということで、労働者もガンガン稼いで、やたらと安いモノばかりを追い求めるのではなく、いいモノには正当な対価を支払おうとすることが回りまわって日本人全体の給料を上げて、日本経済につながるということのようです。