韓国人、韓国人を叱る/赤石晋一郎

 

 

 慰安婦問題や徴用工問題など日韓の歴史問題を多く手掛けられているジャーナリストの方が、「最悪の日韓関係」と言われた文在寅政権においても、「冷静」な観点を以って日韓関係を見ていた韓国人について取り上げられた本です。

 

 日韓双方でベストセラーになった『反日種族主義』についても1章を設けて触れられていて、政権を挙げて否定の動きがあったモノの、韓国内においても一定の評価を受けるなど、日本にいると反日一辺倒の報道しか見られない中、一定数の韓国人は醒めた目があったことに言及されています。

 

 慰安婦問題や徴用工問題の「被害者」とされる方へのインタビューの中でも、特に元慰安婦の中には、「支援」団体とされる抵対協にむしろ食い物にされていることに怒りを表明されている方もいて、シンシアリーさんが『韓国人による罪韓論』で触れられているように、一部の市民団体の中には、実は問題の解決や元慰安婦の救済には関心がなく、むしろずっと問題がくすぶり続けて自分たちのメシのタネになることを望んでいるフシすらあるということです。

 

 また、補償を求める市民運動の中でも、矛先を日本政府や企業に向けるのではなく、韓国政府に向けて、日韓請求権協定に基づいて受け取った補償金をちゃんと被害者に給付するよう求めている向きもあるということです。

 

 さらには、朝鮮戦争における米軍慰安婦の問題や、ベトナム戦争時の韓国軍による虐殺など韓国の凶行を糾弾する韓国人についても取り上げられていて、日本で報道されるイメージよりずっと韓国人は多様な意見を持っており、ある意味日本よりもずっと健全な民主主義が機能しているようにも思えます。

 

 日韓両政府とも、自身に都合のいい情報が流れることを望んで、メディアもその意向に沿った忖度を発揮しがちですが、こういう冷静な意見があることを知るのは、日韓関係においても重要なことなのかも知れません。