それからの帝国/佐藤優

 

 

 ”知の怪人”佐藤優さんの自伝的な小説なのですが、この本はモスクワ在勤時に邂逅した盟友とも言えるロシア人との交流にフォーカスしたモノとなっており、一時期行き違いがあったモノの、佐藤さん自身の逮捕拘留を経てなお続いた交流を綴られています。

 

 片や、ご存じの通り、外交官としてソ連邦の崩壊を見届けた後、北方領土の返還交渉に尽力しながらも、小泉政権における対米追従の外交方針転換の結果、国策捜査の犠牲となって512日に渡る拘留を強いられるのに対し、盟友はラトビアの独立に尽力しながらも、独立した途端ロシア人ということで厄介払いされて、流れ流れて現在はプーチンウクライナ侵攻の思想的バックグラウンドを支えるという、双方とも波乱万丈を絵に描いたような人生を歩まれつつも、深いところでの結びつきを続け、今なお時折連絡を取られていることを明かされています。

 

 佐藤さん自身、盟友サーシャとの邂逅があったからこそ、より深くロシア人を理解できたとおっしゃられていますが、ロシア人だからどうのこうのというのはあるかもしれませんが、そこまで深いところで理解しあえる友人に出会えたということが、人生における僥倖でしょうし、人との交流が希薄なモノとなりつつある昨今、ある意味御伽噺的にすら感じるところもあり、ここまでの波乱万丈を体験したいかというと、ご勘弁なのですが、こういう邂逅をうらやましく思いつつ、400ページ弱の大著をイッキに読み切ってしまいました。