仏教の大東亜戦争/鵜飼秀徳

 

 

 僧侶でもあるという異色のジャーナリストが仏教界の大東亜戦争への関わりについて紹介された本です。

 

 この本では「大東亜戦争」ということになっていますが、日中戦争、太平洋戦争において、仏教界がかなり深く関与されていたことを指摘されていて、金属でできている梵鐘や仏像を兵器に転用するための供出を強いられたことはよく知られていますが、必ずしも「強いられた」というワケでもないようで、そういう供出以外にも僧侶を戦地に派遣したり、積極的に思想的な「布教」にも関わったということで、戦後仏教界では、本来「殺生」を最大の禁忌とするはずの仏教関係者が積極的に戦争に関与したことに反省があったということです。

 

 個人的には、僧兵を囲っていたりした仏教界が今更何を言ってんだ!?と思わなくもないですが、遅きに失したにせよ、そういう「反省」の境地に至ったのは悪くないことだったのかもしれません。

 

 そういう積極的な支援に至った遠因には明治維新時の廃仏毀釈が遠因としてあったようで、そこで徹底的に排斥されたことで、逆に立場を取り戻すために権威にすり寄る傾向を強めた結果、戦争への積極的な協力につながったようです。

 

 ただ、「殺生」という禁忌に触れるということはあるモノの、日本への仏教伝来以降、明治維新廃仏毀釈まで、仏教はかなり権力との密接な関係を維持していったことは確かでしょうし、特に日本の僧侶は、妻帯したり飲酒したりとかなり禁忌には鈍感なイメージがあるので、政権にすり寄るためには手段を択ばないというのは、そうなんだろうなぁ、としか思えないのも確かです。

 

 そういう意味でも敗戦を受けての仏教界の「反省」というのはそれなりに意義があることだとは思うのですが、そういった姿勢が今なお続いているのかどうかは、甚だ怪しいと思えるのが正直なところではあります…