歴史を動かしたプレゼン/林寧彦

歴史を動かしたプレゼン (新潮新書)

歴史を動かしたプレゼン (新潮新書)

 博報堂で広告の企画をされている方が、ある歴史上の事象
「プレゼン」という観点で捉えて紹介されています。

 取り上げられているのが、コロンブスがスペインのイザベル
女王に航海のスポンサーとなってくれるよう懇願したこと、
羽柴秀吉織田信長亡き後の後継者を決める清洲会議で三法師
を後継者として推したこと、大黒屋光太夫がロシアの女帝エカ
テリーナ2世に日本までの帰国を懇願したこと、最後がクーベ
ルタン男爵が古代オリンピック復活に向けて行った演説です。

 著者の林さんは、「企画力とは、個人の夢や野心を相手(ク
ライアント)と共有できる形に加工できる能力のこと」だと
おっしゃっておられます。

 その観点から見て、林さんは、特にコロンブスがイザベル女王
に対して行ったプレゼンを激賞されています。

 自分の射幸心を満たす、ある意味とんでもない野望を、しっか
りとスペイン国家としてのメリットをちゃんと設定して、相手が、
ある意味自発的に動く状況を作ったところが印象に残ります。

 また、秀吉が清洲会議で行った「プレゼン」の問題設定の鋭さ
も印象に残ります。

 「天下人」としての織田信長の後継者なのか、「織田家」の
跡継ぎとしてなのか…柴田勝家が、主観的な要素の入り込む余地
の大きい「天下人」の後継者としての器量から信孝を推したのに
対し、秀吉が、ある意味疑問をさしはさむ余地の無い、「織田家」
の後継者として、本能寺の変の時点で織田家の家督を継いでいた
信忠の子・三法師を押す、ということなのですが、野望バリバリ
で反論したいであろう家臣団に反論の隙を与えません。(まあ、
光秀を討ったという手柄と、彼の人誑しとしての才能もあった
んでしょうけど…)

 まあ、仕事上プレゼンをする人は、プレゼンを成功させるため
のエッセンスが、歴史上、親しみのあるストーリーにのせて語ら
れていて、非常にタメになるので、是非手にとって見てください。