国境のない生き方/ヤマザキマリ

 

 

 ここのところビミョーに著者ループしているヤマザキマリさんなんですが、この本は彼女のこれまでの人生を読んできた本と旅を手掛かりに語られます。

 『とらわれない生き方 母として 「いいお母さん」プレッシャーのかわし方』にしても『仕事にしばられない生き方 (小学館新書)』にしても、彼女のこれまでの生きざまを題材にしているので、この本も含めて、内容的にはかなり被っているのですが、様々な切り口で語られることで「またか!?」感は不思議なほど少ない気がします。

 副題には「私をつくった本と旅」とありますが、ヤマザキさんの半生が“旅”そのものなので、個人的には、改めて“旅”という感じは希薄で、“本”との邂逅が印象的です。

 『とらわれない生き方』の中で、オトコに惚れるときにはその人の“知性”に惹かれるとおっしゃっていただけあって、かなり本の選び方、感じ方にもアーティスティックなモノを強く感じさせます。 14歳で安倍公房を読んでいたというのもオドロキですし、難解と言われるガルシア・マルケスの深遠な世界を体全体で受け止めようとするところも印象的です。

 その中でも一番印象的だったのは、子供の頃の『ニルスの不思議な旅』についてのことで、この本に出てくる動物たちに同化するような読み方は恐るべし、でした。

 こういう本との付き合い方ができたらいいなあ、とつくづく思わされる本です。