人生に必要な教養は中学校教科書ですべて身につく/池上彰、佐藤優

 

 

 ”わかり易過ぎるニュース解説”の池上さんが”知の怪人”佐藤さんと、2020年初頭の中学校の教科書の読み比べをされた本です。

 

 お二方はこれまでも教育に関する対談本を出版されていますし、元々池上さんはNHKの『週刊こどもニュース』のキャスターを務めるにあたって、中学生がどのくらいに知識レベルにあるかを中学校の教科書で確認されていたということですし、佐藤さんも教科書についての著書を何冊か出版されていて、かなりお二方の関心は高そうです。

 

 お二方は、中学校の教科書に書かれていることをすべて把握していたとしたら、相当な”物知り”にあたるとおっしゃっておられ、オトナが世の中の現況の概要を知るための資料として、中学校の教科書は相当適性が高いとおっしゃいます。

 

 佐藤さんはワタクシよりちょい上の世代にあたるのですが、佐藤さん自身が教育を受けた時期とかなり様相が異なっていて、かつてのように、ただただ知識を教え込むという感じではなく、如何にして社会に出てから自分で判断するための基盤となる様な、ある意味”立体的”な記述となっているようです。

 

 さらには、歴史教科書における沖縄やアイヌの記載、韓国併合の経緯、公民の教科書にはLGBTや在日朝鮮・韓国人への言及があるなど、ダイバーシティを意識した内容となっているということで、グローバル化が進展する中で生き抜いていけるように、との配慮もあるようです。

 

 「社会で生きる力をつける」という指導要領の方向性の変化の表れについて、お二方はかなり好意的に捉えられているようで、最早知識偏重教育が破たんした中、新たな人材の育成に一定の方向性は示されたようです。