男性の育休/小室淑恵、天野妙

 

 

 以前、『子育てがプラスを生む「逆転」仕事術』でご自身の子育ての体験を通して男性の育休の効用を紹介されていた小室さんが、ともに「男性育休義務化」に取組まれている天野妙さんと共作された男性の育休に関する本があると知って、手に取ってみました。

 

 まあ、この本は共著者である小室さんの知名度を利用した感があり、実質的な主著者で、コンセプトは天野さんのモノだと思われ、前半の主要な概念に関わる部分を天野さんが書かれ、後半の一部の補強的な章を小室さんが執筆されています。

 

 お二方は、病時保育の重要性を提唱する駒崎さんと組んで、「男性育休義務化」に取組んでおられ、その主張は昨年末に発表された男性の育休に関する法整備において、かなりの部分で取り入れられているようです。

 

 特にこれまでの日本では、男性が育休を取得することについて、潜在的な抑止力が働いていたという側面が、多々あったということですが、そういうモノが今後、色んな意味で払しょくして行かなければ、そういう企業自体が淘汰されてしまうリスクがあるということと、そういう企業を放置しているようでは日本の少子化の解消や労働生産性の向上などの喫緊の課題の解決がおぼつかなくなるということです。

 

 一つ天野さんが提示されていたデータでオモシロかったのが、日本のおとーさん方と、欧米のおとーさん方の育児での寄与率なんですが、実はあんまり差が無いということで、寧ろそれ以外の家事への寄与率に大きな差があるということです。

 

 ただ、日本のおかーさん方は、育休を取らないおとーさん方がアテにならないので、育児+家事の負荷がかかっており、せめて育児以外の家事労働を分担するだけでも、ある程度の負荷軽減が見込まれ、それだけでも育児休業の意義があるということです。

 

 さらには、産後2週間以降に産後うつになるリスクについて、おとーさん方が会社に行かないでいいというだけで、おかーさん方の睡眠不足が軽減されるということもあり、産後うつに伴う虐待やおかーさん方の自殺なんて悲劇を避けれる可能性が高まるということです。

 

 また、企業側としては、「育児に優しい」という制度を訴求することで、優秀な人材の確保にもつながるということで、これまで男性の育休を促進するインセンティブがあまり感じられなかった企業側としても、軽視できない状況が徐々に形成されつつあるようです。

 

 そういう功利的な側面もありながら、それよりも特におとーさん方にとって、育児に初期からコミットすることにより、家族としてのつながりがより強くなり、シアワセにつながるというのは、かなり大きなモノだと思えます。

 

 12/24に発表された育休制度の見直し案では、この本に書かれていることがかなり多く盛り込まれており、少しずついい状況になっていけばいいな、と思います。