ネット右翼になった父/鈴木大介

 

 

 『最貧困女子』『家のない少女たち』など貧困にあえぐ女性の苦境を紹介する作品で知られるルポライターの方が、ご自身のお父様が最晩年にネット右翼に特有のネットスラングを使うようになり、亡くなられた後、遺品を確認する中で右翼的な論調で知られる雑誌があったり、使用されていたパソコンを検証するとネット右翼と言われるYouTubeへのアクセスの形跡が見られるなど、ネット右翼化の形跡があったことから、そういった思想に接するようになった過程を追った内容を紹介した本です。

 

 鈴木さん自身が1973年生まれで、ほぼワタクシと同年代ということもあって、親の世代の状況がよくわかるところもあるのですが、高度経済成長時代の企業戦士で家庭を顧みずといったステレオタイプがありがちですが、鈴木さんのお父様も多忙で単身赴任の時期も長かったなど、そういった側面があったようで、鈴木さんともお姉さまとも密接な関係性とはいいがたかったようで、お子さんとの距離感はビミョーなままだったということです。

 

 あくまでもスズキさんのお父様の個人的な思想のルポではあるのですが、そういう家庭での立ち位置がビミョーな高齢男性は、ご自身がそういう育て方をされたということもあって戦前の家父長的な志向がネット右翼の思想との親和性が高いようで、阻害された挙句、過激なネット右翼になってしまう傾向が強いということで、鈴木さんのお父様は単に視聴するだけで、そういう思想に染まってしまったワケではなかったことが、その後の検証で分かったようですが、そういう高齢男性の疎外感という傾向がネット右翼の蔓延を助長している傾向があるという社会問題的な側面を浮き彫りにしていたのも印象的でした。

 

 その頃と比べるとワークライフバランスの考え方も進み、家庭生活を重視するおとーさん方が増えていることもあって、疎外感から極端な思想に走る人も減るんじゃないかとは思いますが、経済的な繁栄はあってもプライベートの充実がなければ、なかなか難しいことになるということが見え隠れして、いろいろと考えさせられるモノでした…