読書道楽/鈴木敏夫

 

 

 スタジオジブリのプロデューサーである鈴木敏夫さんの読書遍歴を紐解くという趣旨の本ですが、言ってみれば鈴木さんの考えみたいなモノを読書を通して垣間見るという意図が垣間見られ、『仕事道楽』の続編みたいな位置づけもできるんではないかと思います。

 

 全体を通しての印象なのですが、鈴木さんの読書の傾向として、かなりの雑食で清濁併せ呑むといったという感じの印象を受けます。

 

 よく知られているように出版社の編集者をされていたということもあって、そういう雑食的な傾向となったのかな、とも思ったのですが、そういう部分は学生時代からあったようで、当時の学生にありがちな大江健三郎などの純文学に耽溺するといったところを見せながらも、純文学かぶれしている若者だったら毛嫌いしそうな、当時流行していたサラリーマン文学と言われる源氏鶏太などの、ある意味下世話なところもある本を読んでいたりするのが意外でありながら、鈴木さんらしいなぁ、とも思わされます。

 

 そういう守備範囲の広さが、職人気質でアーティスティックな頑固さを持つ宮崎駿さんや高畑勲さんを手なずけて、現実的なコマーシャルベースに落とし込むようなことができた秘訣なんだろうな、と思います。

 

 最も印象的なエピソードは、子どもの頃に『赤毛のアン』を読んで人間の心の襞みたいなものにまで分け入られていることに感銘を受けて、「どうしたらこういう力を持った物語がかけるんだろう」という印象を受けたということで、子どもの頃からプロデューサー気質を持っておられたようで、根っからのプロデューサーだったんだなぁ、ということをうかがわせます。

 

 やはり読書というのは、人格をてきめんに反映するだなぁ、ということを改めて認識させられる興味深い本でした。