神主はつらいよ/新井俊邦

 

 

 SEとしてのサラリーマンから、お父様の急病で急遽神主に転身することになった方が、苦労話を語られた本です。

 

 全国には20万社の神社があり、そのうち8万社が宮司を置かなければならない神社本庁に属する神社だということなのですが、実は宮司さんって1万人しかおられないそうで、多くの宮司さんは一定の地域の本庁みたいな神社の宮司さんが支社みたいな神社の宮司を兼任されているということみたいで、この本の著者である新井さんも14社もの宮司をされているということです。

 

 普段はそこまでテンパることはないようですが、特定のイベントの時期はどの神社でも同じようの時期に同様にイベントが発生するということで、特に新年の初詣の対応は、それぞれの神社で祝詞を上げる必要があるということで、それこそ分刻みのスケジュールで対応をしなくてはいけないということです。

 

 また、昨今神社の氏子さん自体が減っていたり、地鎮祭をする人も減っていたり、少子化で七五三をする子供たちも減っているなど、複合的に神社の収入源が減少しており、宮司さんとしての収入だけでは生活が成り立たない方がほとんどだということで、何らかの副業をされている方が多いということです。

 

 宮司さんというと、やはり神職だけあって近寄りがたいイメージを持つ人が多いとは思うのですが、著者である新井さんは、神社の家に生まれたとは言え、一般企業に勤務されていただけあって、フツーの悩みを抱える姿が印象的でありながらも、地域の神社を守るために、一定の犠牲を払いつつ取り組まれていることが印象的で、我々の近くにも同様の宮司さんがいらっしゃるはずで、そういった活動を支援していかなければ…と感じさせられます。