データ思考入門/荻原和樹

 

 

 東洋経済新聞勤務からデータサイエンス専攻のために英国に留学し、データの可視化を専門とする方が、データを如何にして「見せる」かについての「データ思考」の概要を紹介した本です。

 

 著者の荻原さんは、コロナ禍の早期に感染状況の推移をわかりやすく一目で理解できるダッシュボードをアップして、一躍データサイエンティストとして注目を浴びたようですが、ICTの進化により扱うデータ量が飛躍的に増大し、内容も複雑化していることから、よりそのデータの持つ意味を「伝える」技術の重要性が高まっているということです。

 

 統計学などでデータの見せ方について学ばれた方も少なからずいらっしゃって、「見せ方」による印象操作みたいなこともあり得るという話はよくある話ではありますが、ビッグデータの進化によって、決して悪意を持っていなくても、データの見方の切り口によって、極端に言えば真逆の結論を導くことも無きにしも非ずだということもあって、提示する側がどういう意図を以って、どういう人たちをターゲットにして、どういう理解をしてもらいたいのかということをあらかじめデザインした上で、データの見せ方を考えていくということで、その過程も含めて紹介されています。

 

 データの加工自体は高度なツールが多々提供されていることもあってかつてなくハードルは下がっているのは確かなようですが、それだけに提供する側が自分の意図とそれに見合った「見せ方」とのマッチを検証しておかないと、思わぬ誤解や、ヘタをすれば炎上のリスクもあるということで、そのあたりのリスク管理も含めて言及されています。

 

 「データ思考」という新たな、しかも今後重要性が飛躍的に高まっていく分野について、基本的なトピックを網羅しつつも、かなり実務的なレベルでありながら、プレーンでシンプルな紹介をされており、非常に有用な本ですので是非ご一読の程を!