医の変革/春日雅人編

 

 

 日本医学会では、その開催を機にその当時の医療の状況をまとめた書籍を出版しているようで、この本は2023年4月に開催された際に出版されたものだということです。

 

 医療の現況ということで、最先端医療の進化の状況を紹介されていたり、ここ数年最大の問題であるコロナ禍への対応、コロナ禍で露わになった医療提供体制の問題点といった医学界の最新の関心事を、基本的には医学界だけではなく一般にもアピールすることを意図されているようです。

 

 医学界以外の人もターゲットとされているということで、ある程度専門用語を避けるようにはなっているのですが、最先端医療などのトピックでは説明に必要最低限とはいえなかなか難解で、読み解くにはなかなか苦労するところがありながらも、遺伝子治療やAIを駆使した治療、ウェアラブルバイスを活用した予防医療などの先端医療が実際の治療に使えるところまでもう少し、といった技術を紹介されています。

 

 また、日本人の最大の死因であるガンの治療についてもかなりの進化を遂げているということで、ゲノム治療や遺伝子治療の可能性についてかなり期待が持てるものであることを紹介されています。

 

 ただ、やはりここ数年の最大のトピックはどうしてもコロナ禍についてのモノとならざるを得ず、感染症治療の体制についての脆弱性を露呈したことについて、行政だけでなく医学界としても取り組むべき課題について触れられています。

 

 コロナ禍においては治療に向けた努力についての感謝とともに、全体の体制の不備へのキビシい批判もあったことは確かで、そういったモノをキチンと総括しようとする姿勢は、政界や行政と異なり好感の持てるところではあり、技術的体制的な充実へ期待を抱かせる内容でした。