「がん」が生活習慣病になる日/木原洋美

 

 

 かつてはガンの宣告を受けるということは死刑宣告にも等しいという感覚がありましたが、いわゆる5大ガンについては、ある程度早期発見ができれば、ほぼ治る病気となりつつある現状を医療ジャーナリストである著者が紹介された本です。

 

 現時点ではタイトルにあるような「生活習慣病」とまで言うのは時期尚早なのかも知れませんが、早期発見が難しいと言われるすい臓がんなどの一部のガンを除けば、早期発見さえできれば、5年生存率が80~90%とかなり効率になってきているということと、これまで標準治療と言われている外科的手術と抗がん剤治療だけでなく、ガン細胞に直接作用し、周辺の健全な細胞への悪影響を最低限にするような治療も進展しているということです。

 

 ただ、未だがん検診の受診率が低く、特にコロナ禍における健診控えの風潮による悪影響も見られていた中、受診者の負担が少なくかつ検知性能の高い検査手法も開発されつつあるということです。

 

 未だ保険診療の大正とはなっていないということですが、血液、尿、唾液などの体液の検査でガンを検知できる検査手法がかなりの精度を実現しつつあるということで、受診者の検査負担が著しく軽くなるということもあり、大きな期待を寄せられているということです。

 

 また、ガン細胞を持つ患者の尿に引き寄せられるという線虫による検査の開発も相当程度進んでおり、特に早期発見が難しいというすい臓がんに特化した検査も開発されつつあるということで、実現すればすい臓がん治癒の可能性も大きく進展するポテンシャルを備えているということです。

 

 ということで、ガン自体余程悪化するまで放置しなければ治る病気になりつつあり、人間ドック等でがん検診も併せて実施するようになれば、劇的にガンによる死者が減るんじゃないかと期待を膨らませてしまう内容でした。