若い読者に贈る美しい生物学講義/更科功

 

 

 確か”知の怪人”佐藤優さんが勧められていたんで手に取ってみました。

 

 『若い読者に贈る』とありますが、「はじめに」で「好奇心さえあれば、百歳超の人にも読んでほしいと思って、この本を書かせて頂いた。」とおっしゃっているので、50歳オーバーのワタクシも気にしないで読むことにします。

 

 最初の章で、生物学と言うのはどういうモノなのかということを語られていて、現在では自然科学がかなり細かく分類されているのですが、それはあまりに自然科学自体がカバーする範囲が広範に渡り過ぎてツカミどころがなくなってしまうので、ある程度の分野訳がされているに過ぎない、というようなことをおっしゃっておられて、そういう更科さんの「生物学」に対するお考えが反映されているのか、この本では我々がイメージするような「生物学」のトピックに限らず、植物に関するトピックや医学に関するトピックも取り上げておられて、「生物学」というものの立体感みたいなものを感じることができます。

 

 例えば、植物と生物の類似性ということで、哺乳類は、植物の導管同様、栄養素を取り入れる一本のメインの管からそれぞれの部分に栄養素を配る部分は同じじゃないかと指摘されているのが、意外でしたけどミョーにナットクさせられます。

 

 また、とかく人間は、進化論的なトピックにおいて、人類を生物の進化の究極のカタチ、みたいな位置づけをしがちですが、更科さんは、あくまでもある条件の下で考えると現在の人類は非常に環境にフィットして繁栄をしているように見えるけれども、ちょっと視点を変えると、よりフィットしている生物がいるということで、必ずしも、如何にもな”進化論”に同意されていないのが印象的です。

 

 こういうプレーンなモノの見方の科学というのに初めて触れたので、かなり目からウロコですし、こういう出会いがあると科学の本をガンバって読むのも悪くないなぁ、と思います。