煩悩リセット稽古帖/小池龍之介

 

煩悩リセット稽古帖

煩悩リセット稽古帖

  • 作者:小池 龍之介
  • 発売日: 2009/01/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

 僧侶の小池さんが日々の生活の中で煩悩を少しでも減らすための思考を、ご自身で描かれた4コマ漫画を交えて紹介されるという趣向の本です。

 

 最も根源的な煩悩と言われる三毒である貪欲(とんよく)・瞋恚(しんに)・愚痴(ぐち)を克服する方法を紹介した上で、より高い次元で「悟り」に近づくためのヒントを紹介されています。

 

 ちなみに小池さんは三毒について、貪欲(よくぼう)・瞋恚(いかり)・愚痴(まよい)とルビを振られているのですが、「愚痴」というのが、普段我々が使う意味でのグチとかなり意味が違うので、誤解を防ぐという意味と、三毒の本質的なモノを分かり易くするためにということみたいです。

 

 そもそも仏教の考え方でいうと、すべてに事象について自分の考えでどのようにも位置付けられるということなのですが、得てして我々のような凡夫は目の前の事象を三毒のようなフィルターを通してみてしまいがちだということと、それは相当意識しないとそのフィルターを外して、プレーンに世の中を見ることは難しいということで、そのフィルターの外し方のヒントを、ありがちな日常のシーンを描いた4コマ漫画を通して語られます。

 

 まずは、自分がどういう風に感じているのかということが第一歩のようで、目の前の事象に怒りを感じたら、自分が怒りを感じているんだということを認識することが重要なようです。

 

 それを認識しないまま、様々な事象を三毒が赴くままにしてしまうと、思考が渋滞を起こしてしまい、かなり大きなストレスになってしまうということで、一旦客観的な視点を持つことで、その時点でのマイナスの思考をリセットすることにつながるようです。

 

 もっとレベルを上げていくと、自分自身の存在すらも客観的に見ることができるようで、そうなると目の前の事象がスルスル通り過ぎていくように思えて、穏やかなココロが持続するようです。

 

 こういう考え方って、原始仏教に近いところにあるようで、小池さんご自身はこの本の著作当時浄土真宗の寺院の住職を務められていたということですが、こういう原始仏教的な考え方にかなり関心が強かったようで、こういった著作に取組まれたということです。

 

 この本の中で触れられているのですが、ブッダ自身は「宗教」には否定的な考え方をお持ちだったようで、そういう意味では三大宗教の一つとされるようになったのは不本意かも知れませんが、こういう原始仏教に近い考え方は、どちらかと言うと宗教と言うよりも自己啓発に近いモノのように思えてきます。