格差が遺伝する!/三浦展

 

 

 『下流社会』で知られる三浦さんが、子どもに受け継がれる”格差”について語られた本です。

 

 この本は2007年に出版された本で、当時は今ほど格差の遺伝ということについては語られていなかった気はするのですが、昨今はそういう現象を解消しようとするどころか、教育予算を削減して助長するような動きにすらなっているようなので、より”格差”の固定化が顕著になっているように思えます。

 

 そういう”格差”の遺伝だったり固定化だったりと言う現象は、親の収入の多寡によって受けられる教育が変わってしまうという側面は、なんとなくイメージできるところなのかな、と思いますが、三浦さんは”格差”が遺伝してしまう原因について、これまでの著書と同じようにアンケートによってリサーチをされています。

 

 例えば、収入の高い家庭だと、朝ご飯をちゃんと食べている割合が、収入の低い家庭に比べて高いとか、規律のある生活ができている割合などなど、収入が高い家庭と低い家庭で有意な差がある項目と、それが高い学歴につながる割合と比較して、意外と金銭的な面以外にも”格差”を遺伝させているような事項が多いことを示唆されています。

 

 確かにその日食べていくだけでやっとの追い詰められた状況で、規律がどうのこうの言ってる場合ではない人が少なくないとは思いますが、そこを子どものために踏ん張ることが、”格差”を乗り越えることにつながるかも知れないということで、そういう部分についての啓蒙に是非ともチカラを入れてほしいところですし、そういう”格差”に下側から抜け出すための展望みたいなモノが、もっとリアルに描けるような状況を作ってもらいたいところですが、コロナ禍で逆にそういう傾向が助長されているようにも思えます。

 

 でも、そういうところが国の活力を生むと思うんですけどねぇ…