子どもを守る仕事/佐藤優、遠藤久江、池上和子

 

 

  ”知の怪人”佐藤優さんが臨床心理士であり児童養護に詳しい池上和子さんと共に、長年社会福祉の発展に尽力してこられた遠藤久江さんに児童福祉の進化と現状について尋ねられるというカタチの本です。

 

 昨今は、子どもの貧困が大きな問題となりつつあり、コロナ禍がその状況に拍車をかけていますが、日本における貧困というのは、食えるか食えないかといった生存に関わるレベルのいわゆる絶対的貧困ではなく、相対的貧困というべきモノなので、なかなか表面的にならないという状況があります。

 

 しかも日本においては貧困について自己責任論が根強くあり、支援を受けることについての否定的な考えを持つ人が多いということで、そういう風潮が子どもの支援にまで影響を及ぼしているということです。

 

 ただ、徐々にではあるものの量的、質的な改善が図られつつはあるようで、明石市など一部の先進的な自治体においては、大幅に児童福祉にかかわる人たちの待遇を大幅に改善したところ応募が殺到し、人材の能力の大幅な底上げにつながったという先例ができ、多くの自治体がそれに続こうとされているようです。

 

 佐藤さんは最近人材育成に力を入れられていて、そういうテーマの本を立て続けに出版されていますが、佐藤さんが多く出版されているエリートの育成には、やはり基盤としての人材の多さが不可欠であり、才能ある子どもが貧困がゆえに埋もれてしまわないように救い上げてもらいたいものです。