決戦前のランニングノート/大迫傑

 

 

 東京オリンピック6位入賞の激走を最後に現役を引退したマラソンの大迫選手の東京オリンピックに向けたトレーニング内容についての個人的なノートを中心とした記録で構成された本です。

 

 大迫選手は高校の時に、現在は東海大学の駅伝監督をされていて2019年の箱根駅伝で大学史上初の優勝に導いた両角監督のススメで練習ノートをつけ始めたということで、大学進学以降はそれほど熱心に記録はされていなかったということなのですが、東京オリンピックの準備において、記録を復活させたようです。

 

 国内にいると、様々な雑音に悩まされるということで、ノイズキャンセリングの意味もあって、東京オリンピックに向けたトレーニングをケニアで行うことにされて、さらにはコロナ禍によりケニアロックアウトのため、トレーニング拠点をアメリカに移すなど、かなり負担は強いられたようですが、ある程度ノイズキャンセルの目的は果たせたようで、それなりにリラックスしながらトレーニングに集中されていた様子が伺えます。

 

 ただ、トレーニングに並行して、引退後の育成に関する準備も進められていたようで、この本の中では引退については触れられていませんが、ご自身がガチで勝負してケニア勢に勝てる可能性については否定的な見方をされており、トップに立つことはのちの世代に託して、ご自身がその支援をしようとするようなことは示唆されており、東京オリンピックでの引退を決意されていたかどうかはともかくとして、遠くない将来にサポート側になろうとしていたことは間違いがないようです。

 

 ある意味、大迫選手自身、自分のレースのためにはあらゆる努力をされていたと思うのですが、あまりに先が見えすぎていたんじゃないかということが多少残念ではあるのですが、大迫選手が手掛ける選手の今後の活躍を期待したいところです。