内側から見た「AI大国」中国/福田直之

 

 

 朝日新聞の中国特派員の方が、中国におけるAIの発展とIT分野におけるアメリカとのせめぎあいについて紹介された本です。

 

 コロナ対策でも明らかになったように、中国では目的を果たすためには人権が大きく制限されることがあって、そういう現象がAIの分野でもかなり顕著になっているようです。

 

 AIは5Gと並んで、今後のIT分野の覇権を占う上で、かなり大きな影響を及ぼす技術分野で、AIの実用への適用という分野で現在、欧米と比べてかなりのアドバンテージを持っているということです。

 

 というのも中国では欧米とは異なり、顔のデータなど個人情報に関わるデータを集めることがかなり容易で、そういうデータの収集により、AIを実用化できる分野がかなり広範に及んでいることが、AIの実用分野での目覚ましい進化に貢献しているということです。

 

 コロナ禍でもAIの活用がすすめられたようですが、さすがに肺の症例のビッグデータを活用したコロナ観戦の早期発見という取組には、データの収集に抵抗があったようですが、コロナ感染の追跡に監視カメラのデータが使われて、かなり詳細に個人の行動履歴が追跡されたりしたようです。

 

 ただ、こういう目覚ましいIT分野での進化について、さすがにアメリカが座視しているワケにはいかず、中国への技術要素の輸出禁止などで対抗しつつあります。

 

 特に中国では高度に集積された半導体の製造技術が整備されておらず、台湾メーカーに依存していることを狙い撃ちされて、半導体の調達に苦慮しているということで、かつての日米の半導体について紛争が繰り返されているということです。

 

 果たして、日本の時と同じように進化を妨げられるのか、活路を見出してさらなる進化につなげるのか…日本としても、なかなか難しいかじ取りが求められそうです。